今回は、【太淵(たいえん)】というツボについて、場所や、刺激することで期待できる効果などをまとめていきます。
太淵は肺の経絡に所属するツボです。その中でも特に肺に働きかける力が強いため、呼吸器の不調全般に効果があります。
手首にあり、脈拍を感じる場所にあるツボなので、不調を感じた時に刺激しやすいのもオススメなポイントです。
秋冬の寒さや空気の乾燥、春の花粉に負けないように、太淵を刺激して呼吸器の働きを整えましょう。
目次
太淵(たいえん)の位置と所属経絡
太淵というツボの位置や、所属する経絡について確認していきます。
太淵の位置
手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部。
太淵は手首の掌側にあるシワ(手関節掌側横紋)の、親指側の端にあるツボです。軽く触れると拍動(橈骨動脈)が感じられます。
太淵の所属経絡と特徴
太淵は手の太陰肺経に所属するツボです。肺経は胸から始まり、手の親指に伸びる経絡です。
- 肺経の原穴(げんけつ)
太淵は肺の経絡の原穴(兪土穴)に該当します。五臓の治療にはよくこの原穴に背中の兪穴(肺兪)をあわせて用いるため、肺兪というツボが重要になります。このツボの組み合わせを「兪原配穴(ゆげんはいけつ)」と言います。
- 脈会(みゃくえ)
太淵は肺の原穴としてのツボの特性のほか、「脈会(みゃくえ)」としての特徴も持ちます。
東洋医学的な診察法の1つに「脈診(みゃくしん)」があります。脈の打ち方や速さ、力強さなどから、全身の状態を診察する方法です。その際、特に診察に用いるのが太淵のツボなので、脈会とされています。
太淵のツボの治療効果まとめ
太淵を刺激することで、期待できる効果をご紹介します。太淵は手首にあるので、押圧も温灸もしやすいツボです。風邪をひいて冷えを感じる時などは、温灸をオススメします。
呼吸器の不調に
太淵は肺経の中でも、原穴という影響力のあるツボの1つです。そのため、呼吸器の不調のほとんどに効果が期待できます。
- 風邪による諸症状
- 喘息・気管支炎
- 花粉症・アレルギー性鼻炎
太淵への刺激は肺の働きを整え、これらの症状を改善してくれます。
鼻水にも
東洋医学において、肺とは呼吸に関わる全ての器官を指します。鼻、のど、気管支、そして肺、全て合わせて「肺」です。
太淵は咳だけでなく、鼻の症状にも著効があるツボです。
- 鼻水・鼻づまり
- 副鼻腔炎
鼻のつまり、不調は鼻呼吸の妨げになる恐れがあります。本来の呼吸では、加湿や保護の観点からも鼻呼吸が理想的です。太淵を刺激して鼻の通りを良くしておきましょう。
太淵とあわせて刺激したいツボ
太淵とあわせて刺激をすることで、より治療効果を高めることができるツボをご紹介します。
中府(ちゅうふ)
前胸部、第1肋間と同じ高さ、鎖骨下窩の外側、前正中線の外方6寸。
中府は左右の胸にあるツボです。鎖骨の真下よりも少し下、胸の筋肉(大胸筋)の上にとります。
- 肺の募穴
中府は肺の経絡の中でも、「募穴(ぼけつ)」という特徴を持ちます。肺の経絡は胸の奥(中焦)から起こり、中府のツボに気が集まり始まります。
- 呼吸をサポート
姿勢と呼吸には、密接な関係があります。背中が丸まり、肩が巻き込むように前に出ている状態では、満足に空気を吸い込むことができません。
中府のツボを刺激することで、胸の筋肉が柔らかくなり、深い呼吸がしやすくなります。中府は特に、こうした筋肉・骨格的にも、経絡を通しても、呼吸に関わる重要なツボです。
尺沢(しゃくたく)
肘前部、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部。
尺沢は肘の関節部分のシワにあるツボです。力こぶを作った時に、出てくる腱(上腕二頭筋腱)のうち、外側の腱のさらに外側にあります。
- 咳止めの特効穴
尺沢も太淵と同じ肺経のツボです。呼吸器の不調に重宝するツボですが、特に風邪や喘息などによって長引く咳や痰に効果的です。
発熱や関節痛など、風邪の初期症状には「魚際(ぎょさい)」のツボを刺激して炎症を抑えましょう。初期症状が落ち着き、鼻水や痰、咳が長引く時に尺沢や太淵を刺激することをオススメします。


おわりに
今回は呼吸器の働きを整える太淵というツボについてまとめてみました。
私たちは呼吸をすることで空気から「気」を取り入れています。肺の働きの低下は、呼吸による「気」の取り入れの低下につながってしまいます。
風邪やインフルエンザだけでなく、一年中飛散している花粉にも悩まされる人が多くいます。負けないように、肺の働きから整えていきましょう。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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