症状から五臓の脾の不調を知り、完治・根治を目指す東洋医学の考え方

脾2 五臓六腑

私たちの体を構成する、五臓六腑の一つである脾について、基本的な働きや養生をまとめました。

今回はその働きの続編として、実際に体に起こる症状を踏まえ、その時に五臓の脾がどのように調子が悪くなっているかを確認していきます。

脾の働きが悪くなると起こる症状として、下記の症状があります。

  • お腹が張りやすい、腹痛が多い
  • 食欲不振
  • 下痢をしやすい
  • 悩みや考え事が胃腸にくる
  • むくみやすい
  • 疲れやすい

これらの症状が、五臓の脾とどのように関係し、起こっているのかを確認していきます。

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消化器系の不調は脾の働きの低下を土台に起こる

僕たちが口から飲み食いして、食道、胃、腸を通り、尿や便として出るまで、その全てに脾という臓器は関わります。脾は消化から排泄までの司令塔といっても過言ではありません。

食欲をコントロールする脾の働き

食欲不振のような不調は五臓の脾が影響します。一方、過剰な食欲は脾の働きが低下した上に、六腑の胃が熱を持った「胃熱(いねつ)」という状態です。

食事を摂り、ある程度の時間をかけて消化・吸収を行い、再び空腹を感じるのは、当たり前のようですが、こうした脾や胃の適切な働きによって実現しています。

お腹が張る、腹痛が多い

食事の前後にお腹が張ったり、腹痛が起こる人も、脾の働きが低下しています。脾の働きの低下によって消化・吸収の力が弱まっていることで、負担が高まりお腹の張りや腹痛につながります。

また、緊張や悩みが腹痛や排便と直結するタイプの人(過敏性腸症候群など)は、脾の働きを取り戻すと改善することが多くあります。脾は「思」という感情と密接な関係があるため、思い詰めたり、悩んだり、考えすぎたりすると働きが低下してしまい、消化器系の不調が現れます。

下痢や軟便・便秘など便通にも関わる

最終的に便を形成し、排便するのは六腑の大腸の働きです。しかし、大腸の排便の働きをコントロールしているのも、五臓の脾です。また、脾には体の水分調整に関わる働きもあるため、便の水分バランスに影響します。

下痢の性質と体の寒熱

余談ですが、今回は下痢の場合の性質の違いについて、少しだけ東洋医学的な豆知識を紹介します。便の形状や質は、特に体の内面を知る重要なサインです。便からわかる、体内の「寒熱」を少しだけご紹介します。

  • 水のような便

水様便とも言われ、便に消化しきれなかったものが混じる場合があります。脾の働きの低下と、体を温める陽の力の低下が考えられる「脾陽虚」の便です。脾の働きの回復の他、陽の力も取り戻す必要があります。

  • 粘りのある便

泥状便と言われ、トイレにべったりと残るような便です。脾の働きの低下と、湿熱という体に湿と熱が過剰にある「脾虚湿熱」が考えられる便です。脾の働きの回復と、湿熱の除去が治療の鍵になります。

脾は後天の精をつかさどる大切な臓器

脾は飲食物から栄養となるものを抜き取り、生きていくのに必要な「後天の精」を生成する臓器です。

私たちは、両親から受け継いだ生命力の源とも言える「先天の精」に、後天の精を補充することで生命力を維持しています。先天の精・後天の精は五臓の腎にしまわれ、体を巡る気血の原料になります。

そのため、生命力を維持していくためにも、食生活は重要であり、脾という臓器の働きも重要になります。

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 脾が排出できない水分(湿)がむくみにつながる

飲食物から得る水分の経路をたどると、下記の通りです。

  1. 脾のコントロールの元、余分な水は肺に送られる。
  2. 肺が全身に巡らせ、肌を潤わせ、汗として出す。
  3. さらに余分な水分は膀胱に送られ、腎のコントロールの元、尿になる。

上記からも、体の水分代謝に関わるのは、脾・肺・腎だと言えます。また、大元の脾の部分で水分代謝がうまくいかないと、汗・尿のトラブルにもつながることがわかります。結果的に体内の水分を排出できなくなり、むくみにつながります。

「生痰の臓」の側面も持つ脾

脾は体内の水分を調整する一方、「生痰の臓」という特徴も持ちます。

脾の働きが正常であれば、体内の水分代謝を助ける役割がありますが、脾の働きが低下すると、水分運行が滞り、よどんだ水分が痰となってしまいます。こうした痰が、むくみや下痢などの「体内の水分過多による不調」の原因となります。

あわせて、五臓の肺を「貯痰の臓」と言います。下痢やむくみなどの水分バランスの問題は、どれか一つの臓だけでなく、脾・肺・腎を中心に治療を行う必要があります。

胃下垂や脱肛、子宮脱も脾の働きの低下

五臓の脾の働きに「昇清(しょうせい)」というものがあります。昇清は「上にあげる」働きを表し、これは栄養素などを上部に運ぶ働きを指します。また、内臓の位置を適正に保つのも、昇清の働きです。

胃下垂や、痔、脱肛、子宮脱のような内臓下垂症状は、脾の働きの低下が原因の一つにあります。こうして、脾の働きの低下によって起こる下垂現象を、「中気下陥(ちゅうきかかん)」といいます。

血尿・血便、不正性器出血などの血が漏れ出る症状も脾の不調

脾には他にも、「統血」という働きがあります。これは、「血を漏らさない」ようにとどめておく働きです。そのため、脾の働きが低下すると、血を血管内にとどめておくことができず、尿や便と一緒に血が出てしまいます。

こうした出血傾向だけでなく、内出血ができやすい人も、脾の働きの低下が考えられます。

その昔、「チョコレートのような甘いお菓子を食べすぎると、鼻血が出る」と言われたことがあります。甘い物を食べ過ぎないように注意する迷信かもしれませんが、東洋医学的に考えると間違ってはいません。過度な甘味は脾を消耗し、出血傾向につながるためです。

このような脾の働きの低下による出血現象を、「脾不統血」といいます。

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脾の東洋医学的な治療・養生を確認

食事の改善

脾は飲食物の消化・吸収に関わる臓器です。

  • 暴飲暴食
  • 偏食
  • 味の濃いものばかり食べる
  • 甘いものばかり食べる
  • 冷たいものばかり食べる

上記のような食生活は、避けましょう。消化に良いものを、しっかりと食べることが脾胃を休め、回復することにつながります。

疲れると、味の濃いもの、甘いものが食べたくなりますが、それを消化する脾胃はさらに疲れてしまいます。疲れた時こそ、脾胃に優しい食事で済ませ、ゆっくり休みましょう。

万全な冷え・湿の対策

脾は他にも「冷え」や「湿」に弱い臓器です。外気温の寒さ、多湿も影響します。また、冷たいものや水分の摂りすぎでも脾の働きは低下するので注意が必要です。

飲食の寒熱は体温を基準に考える

最近では、コンビニやスーパーにも常温の飲み物が売っています。しかし、常温であっても、体温より低い場合は体を冷やしてしまいます。なるべく温かいもの、できれば体温に近いものを飲み食いすることを心がけてみましょう。

余裕がある時は、こうした物理的な温度だけでなく、食材が持つ寒熱の働きを考慮して選ぶとより理想的です。

▶︎五性・五味などの食材の特性をまとめた記事へ

相生・相克関係の確認

  • 心:脾の働きをサポートしてくれる(相生関係)臓器
  • 肝:脾の働きを抑制する(相克関係)臓器

上記の関係を踏まえると、脾の働きを整えるためには、心の働きを高め、肝の働きを抑えることが重要です。

心の体を温める働きが脾を助ける

心の温煦の働きによって、体が冷えから守られています。冷えに弱い脾は、心の働きが低下して体が冷えれば、働きも低下してしまいます。

また、心は精神活動の取りまとめとしての働きもあります。頭を使いすぎたり、悩みすぎたりすると、脾とともに心の働きも乱れ、暴飲暴食につながることもあります。

ストレスで暴飲暴食、は肝の仕業かもしれない

肝の働きによって、脾の働きが抑制されています。イライラやストレスで肝の働きが低下すると、逆に脾の働きは過剰になります。

ムカッとした時に、やけ食いや暴飲暴食したくなる人は肝と脾の働きを確認しましょう。

脾を養う五味は甘味

脾を養う五味は「甘味」です。ここでいう甘味は、白砂糖のような人工的な甘さではありません。

  • お芋類
  • お米
  • かぼちゃ
  • きゃべつ
  • ナツメ

本来、こうした甘味に分類される食材は、脾や胃の消化を助けるような働きを持ちます。あくまで味覚としての甘味だけでなく、消化を助けるような甘味を心がけてとることをオススメします。

脾の調子を整える経穴(ツボ)

私たち鍼灸師が実際に使うツボをご紹介します。ツボへの刺激は、簡単なもので大丈夫です。

三陰交(さんいんこう)

三陰交イメージ

三陰交は、脾に所属するツボです。脾の働きの低下と、冷えによる下痢に効果的です。また、脾の統血の働きの低下にも効果があるのか、婦人科疾患の特効穴とも言われます。

内くるぶしの指4本分上にあります。スネの骨の内側、骨際にあるツボです。

豊隆(ほうりゅう)

豊隆イメージ

「体にたまった湿痰にはまず豊隆」、というくらいよく使うツボです。

体の余分な水分である湿痰を排出する働きがある上、脾と関係する(表裏関係)胃に属するツボです。

すねの外側にあるツボで、膝のお皿の下と、外くるぶしのちょうど真ん中の高さにあります。すねの骨から、ちょっと外側にあります。

 足三里(あしさんり)

足三里は胃に属するツボで、消化・吸収に関わる重要なツボです。

お膝の下、指4本分下がったところにあります。スネの骨の外側にあります。

おわりに

実際にこうした症状を踏まえ、東洋医学では「証(しょう)」を立て、それに合った治療を行います。

▶︎東洋医学における五臓の脾の病証と症状、その治法のまとめ

治療はあくまで鍼灸治療や漢方がありますが、こうした症状を知り、日々の生活を心がけることが第一です。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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