東洋医学における五臓の脾の働き(運化・昇清・統血)と養生のまとめ

脾のイメージ 五臓六腑
東洋医学において、五臓の脾には「運化」・「昇清」という消化吸収をつかさどる役割があります。また、その他に「統血」という血を漏らさぬようにコントロールする働きがあります。脾は冷えに弱い臓器なので、養生としてはとにかく冷やさぬように心がける点があります。他にも、消化吸収の負担が大きな食生活を続けると、脾の疲労が積み重なり食事からの栄養吸収が悪くなります。消化器の疲れがある時には、無理に食べずに脾を休めることも大切です。

 

この記事では五臓の「脾(ひ)」について、東洋医学的に認められている働きやその養生法についてまとめていきます。

「そもそも、なぜ五臓六腑が重要なの?」
東洋医学において、私たちの体を栄養し、活動力の源となるのは「気・血・水・精」といった物質です。これらの物質に過不足があったり、巡りが停滞したりすることで、不調や病が現れます。
こうした気・血・水・精を、過不足や停滞なく循環させるのが、五臓六腑の働きです。五臓六腑の働きが乱れることで、体内の気・血・水・精の状態が悪くなり、体調が崩れてしまいます。
五臓六腑も、気・血・水・精の働きを受けて動いています。そのため、一度不調になると悪循環に陥り、病が長引いたり、持病化してしまいます。それを避けるためにも、原因となる臓腑を把握することが重要だと考えられています。

五臓の脾は主に飲食物の消化・吸収を取りまとめる働きがあります。飲食によって栄養を効率的に摂取し、生命力の源とする「後天の精」に関わる臓器です。「食習慣が大切」、「体を冷やさないように」とよく言われるのは、こうした脾の特徴からだと考えられます。

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東洋医学的な五臓の「脾」の働きと特徴

脾のイメージ

東洋医学的な脾の働きは大きく3つあります。

脾の運化・昇清・統血の働き

脾には、「運化」、「昇清」、「統血」の3つの働きがあります。また、そうした働きをあわせ、飲食物から「後天の精」という生命力の源を作り出す大切な臓器です。

私たちの生命力は、両親から受け継ぐ「先天の精」と、後に飲食物から得る「後天の精」で成り立っています。先天の精を貯蔵するのは五臓の腎の働きです。そこに、飲食物から後天の精を抜き出し、腎に補っていくのが脾の働きです。

では、脾の主な働き3つ、それぞれ細かく見ていきます。

 

運化(うんか)の働き

消化、吸収、全身への運搬を「運化」機能と呼びます。

主に消化器の働きと、消化したものを体に巡らせる働きです。また、余分な水を肺と腎に送り、汗や尿として排出させます。運化の働きが悪くなると、消化不良や下痢、便秘などの胃腸症状につながります。

水の運化が悪くなり停滞すると、「湿」や「痰」といった余分な、ドロっとした性質のものになります。流れが悪くなるので、むくみにつながります。痰が絡む咳なども、脾の不調が絡むことがあります。

昇清(しょうせい)の働き

上にあげる機能を言い、臓器の位置を保ったり、栄養や気・血を上に送る働きを「昇清」と言います。

胃下垂や脱肛のように臓器の位置を正常に保てないような物理的な症状も、脾の昇清の失調によるものです。また、食後に強く眠くなる人は、飲食物の消化に気血をとられ、頭に気血をあげられないからとも言われます。

こうした場合も、昇清の働きが弱っています。

統血(とうけつ)の働き

血が漏れないようにする働きを統血といいます。少しぶつけただけで内出血になってしまう方は、統血の働きが弱っています。他にも、血尿や血便、女性の月経にも強く関わります。脾は婦人科疾患との関連も強い臓器です。

経血量や質、期間の変化が激しい方は、「脾」の養生をおすすめします。

五臓の「脾」の働きをチェックするポイント

脾のイメージ

東洋医学において、五臓六腑の状態は体の各部位に現れると考えています。そのため、体のどこを見れば、どの臓器の調子が悪いのかを判断することができます。鍼灸や漢方の世界では、レントゲンなどの設備がない頃から、体内の様子を診断するためにこうした知識を活用してきました。

ここでは五臓の脾の様子をチェックできる部位を簡単に紹介します。詳しくまとめた記事がありますので、こちらもご覧ください。

▶︎五行思想から五臓の脾に関わる体の部位や感覚をまとめる

  • 五(六)腑:「胃」が表裏関係にあり、脾に対応する腑。
  • 五竅:脾は「口(くち)」に開き外界とつながる。
  • 五主:脾は「肌肉(きにく)」の働きをつかさどる。
  • 五華:脾の状態は「唇」に表れる。
  • 五液:脾が作用して「涎(よだれ)」を作り、流す。
  • 五味:脾は「甘」味に栄養される。
  • 五志:脾は「思」の感情と関係する。
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「脾」の養生・セルフケア

脾に対応する季節は「土用」

土用は、立春、立夏、立秋、立冬の前18日間を指します。季節の変わり目を土用とし、その期間に対応する五臓が脾になります。

各季節の変わり目、気候の変化、作物の変化など、自然界の変化に合わせて僕たちの体も対応します。季節の変わり目に体調を崩しがち、という人は、脾の養生を心がけてみてください。「土用の丑の日」にうなぎを食べる習慣などは、こうした季節ごとの変化に対応するための知恵です。

特に土用の時期には、飲食や急な冷えに気をつけて過ごすと、心と体が整った状態で次の季節を迎えることができます。

食習慣の見直しを

脾は消化・吸収、そこからの運搬をつかさどります。

食習慣が乱れてしまえば、それだけ脾にかかる負担は増え、胃腸症状や、血液循環の悪化、むくみなどの症状につながります。味の濃いもの、脂っこいもの、刺激の強いもの、冷たいものはなるべく少量にしてみてください。

脾の五味が「甘」、という項目でもご紹介しましたが、現代人は「甘」味を摂りすぎている傾向にあります。

  • 何となく調子が悪いけど、お腹は空く
  • 毎食後にデザートがないと落ち着かない

そんな人は、特に要注意です。

「多食甘則骨痛而髪落」甘い物を食べすぎるあなたへ

五臓六腑の関係性において、脾は腎を抑制する働きを持ちます。脾の働きのバランスが崩れると腎を抑制しすぎる傾向にあります。

「多食甘則骨痛而髪落」とは、「甘味を摂りすぎると骨が痛み、髪が抜け落ちる」という意味です。甘いものを食べすぎて脾の働きが乱れることで、骨や髪の状態をコントロールする腎の調子を悪くさせてしまいます。

冷えに注意

脾は冷えに弱い臓器です。「寒邪は臓腑に直中する」と言い、寒さや冷えは脾を直接傷めることがあります。冷えて腹痛が起こったり、下痢をしたりしてしまうのも、こうした理由からです。

女性は特に気をつけて

女性は脾の調子によって、月経の痛みや質が変わることもあります。脾は運化と統血の働きによって、血液循環にも関わります。

甘味は「緩める」働きがあるため、月経の血量にも影響します。また、相生関係である肝の疎泄作用も血液循環に関係し、相克関係の腎は生殖器に関係します。

月経の状態は特に脾・肝・腎の関係によって左右されます。冷えや甘いものによって脾が弱り、悩みを抱える方がたくさんいます。足元、腰を暖かく、少し甘いものを控えてみるだけで、改善します。

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まとめ

  • 脾は消化・吸収を担い、飲食物から「後天の精」を生成する
  • 血液循環やむくみにも影響する
  • 食べ過ぎに注意
  • 冷たいもの、甘いものは極力控える
  • 足腰を冷やさない

脾は毎日の食事の改善や冷え対策など、養生の基本になることが多いです。腹八分目、食べ過ぎず、食べな過ぎず。甘過ぎず、甘くな過ぎず、ですね。

▶︎五臓の脾の病証と治療法はこちらへ

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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