血の停滞を解消する刺絡療法とセルフケアに向けた爪もみのまとめ

刺絡の詳細 治療
鍼灸治療の一つに、刺鍼することで局所的に少量の出血を伴う方法があります。気血が滞り循環が悪くなっている部位の血が流出することで、局所の循環が改善され、全身の不調が改善されます。刺絡療法をセルフケアに取り入れるのは難しいので、爪もみ療法を代わりに取り入れ、特に循環が悪くなりやすい末端の循環から改善していきましょう。

 

今回は鍼灸治療の手法の一つ、【刺絡(しらく)療法】についてご紹介します。

刺絡療法は、経穴(ツボ)に特殊な鍼を刺し、結果的に出血することが多い特殊な治療法です。刺絡療法により、下記の効果が期待でき、結果的に難病も治療できると言われています。

  • 自律神経の調整。
  • 血液循環の改善。
  • 余分な熱の排出。

特に気や血(けつ)といった概念を重視する東洋医学では、血の滞りや過多、血の持つ熱なども時には病気の原因になります。そうした余分な血に対する処置のひとつに、刺絡療法があります。

スポンサーリンク

出血を伴う鍼灸治療「刺絡療法」とは

刺絡療法とは、特殊な鍼によって経穴(ツボ)を刺激することで、結果的に出血を伴い、症状の改善を目指す治療法です。

瀉血との違いの項にて後述しますが、あくまで目的は「出血させる」ことではなく、「ツボを刺激する」ことです。この辺りは後ほど詳しくまとめます。

古典(霊枢九鍼十二原篇)による鍼灸治療の基礎

鍼灸の古典からの引用です。

「およそ鍼を用いる者は、虚するときはこれを実し、満するときはこれを泄し、宛陳するときはこれを除き、邪勝つときはこれを虚しくせよ」

霊枢九鍼十二原篇

簡単に訳すと、鍼灸治療をする者は、以下の4点にのっとって治療をしなさい、という内容です。

  • 足りなければ満たす。
  • 満ちていれば減らす。
  • 停滞する時は取り除く。
  • 邪があれば無くす。

この「宛陳(停滞)する時はこれを除く」という考えを実現するのが、刺絡療法です。

刺絡療法と瀉血の違い

「瀉血(しゃけつ)」というと、西洋医学的な手法で、血液を排出する方法です。

瀉血とは、

治療の目的で,血液の一部を体外に除去すること。高血圧,脳出血,急性肺水腫などの際に行われていたが,現在では行われていない。静脈に注射針を刺して吸引する場合と,皮膚に傷をつけてとる場合とがあり,後者は現在も漢方で行われている。なお,静脈系を拡張させる亜硝酸薬などを用いて血液を一時的に末梢静脈系に送りこみ,心臓に対する血液循環の負担を軽くする方法を薬理学的瀉血と呼ぶこともある。

「百科事典マイペディア」より引用

瀉血自体、今はあまり取り入れられていない手法のようです。

まとめると、

  • 瀉血:血を排出することを目的とした医療行為。
  • 刺絡療法:ツボへの刺激の結果、出血を伴う治療行為。

何だか言い訳みたいですが、説明するとこんな感じです。

刺絡療法の考え方については注意が必要

瀉血との違いに触れましたが、刺絡療法の大原則はあくまで「ツボへの刺激」です。出血はあくまでも結果的に起こるだけであり、出血を目的とした治療法ではありません。

出血を目的とする医療行為は、医師にのみ許されています。実際に、鍼灸師が瀉血をしたとして「医師法違反」で逮捕されたこともあるようです。刺絡療法は歴史もあり、治療効果も高い手法です。きちんと説明を受け、納得の上で治療を受けることが大切です。

刺絡療法の対象となる部位

血液のうっ滞がある部位への刺絡療法

刺絡例イメージ

写真のように赤いイトミミズのような血管が浮き上がっている部位がありませんか?

これは、血流が停滞しがちで、古い血液が流れずにこの場所に留まっているサインでもあります。

こうしたイトミミズのような血管をめがけて、刺絡療法を行うことがあります。その結果、ここにうっ滞していた血液が排出され、新鮮な血液が届くようになります。

手先の末端にある井穴にあたるツボへの刺絡療法

刺絡の中でも、「井穴(せいけつ)刺絡」という手法があります。井穴とは、十二の経絡に所属する、手足末端にあるツボです。心臓から遠い手足の指の血液循環は滞りやすく、そうした循環不良が原因で起こる不調は多くあると考えられています。井穴刺絡はそうした循環不良を改善する手法のひとつです。

まとめると、

手の

  • 親指の爪の脇:肺の経絡の末端
  • 人差し指の爪の脇:大腸の経絡の末端
  • 中指の爪の脇:心包の経絡の末端
  • 薬指の爪の脇:三焦の経絡の末端
  • 小指の爪の脇:心、小腸の経絡の末端
足の
  • 親指の爪の脇:肝、脾の経絡の末端
  • 二指の爪の脇:胃の経絡の末端
  • 四指の爪の脇:胆の経絡の末端
  • 小指の爪の脇:膀胱の経絡の末端

こうした井穴は気が出るツボだと言われます。刺絡療法によって血と一緒に気が出て行くと、全身の気血の巡りが改善されます。

スポンサーリンク

刺絡の治療効果

刺絡の治療効果についてまとめるのは非常に難しく、いわゆる「大抵の症状が良くなる」治療法なんです。

  • 自律神経の調整
  • 血流の改善
  • 余分な熱の排除

代表的なものをあげると、上記の効果が期待できます。

特に、自律神経の調整をあげましたが、自律神経が整えば大抵の不調は改善されます。これは、「自律神経免疫療法」という治療法の考えなんですが、またの機会にまとめます。

刺絡療法の治療機序を追って考えてみます。

血液循環が大きく改善される

血液の部分的な停滞が起こっている

血管は、全身にくまなく分布しています。その隅々まで、栄養素や酸素を含む血液が巡ることで、全身が栄養されます。そして、隅々から不要な物質を受け、取り持ち去るのも血液です。

血液の部分的な停滞がある場合、その近辺の組織は満足に栄養されません。特に心臓から遠い手や足の末端部分の血流は滞りやすい特徴があります。

停滞している血液を刺絡療法によって排出する

栄養素や酸素の供給が終わり、停滞してしまっている血液を刺絡療法により排出します。

すると、その近辺の血管は血液が乏しく、空いている状態になります。体はそれを察知して、新たな血液をそこに送り込もうとします。

血液循環が改善する

刺絡療法で停滞していた血を排出することで、血流の悪かったところに、新しい血液が届くようになります。

結果的に、

  • 今まで血流の悪かった部位の血流が改善する。
  • 流れるはずだった血液が有効活用される。

表現が難しくなりますが、ある血液が、必要なところに、必要なだけ届くようになります。これが、体にとっては非常に大切だと考えられます。

スポンサーリンク

刺絡療法をセルフケアに取り入れる

医療器具ファインタッチを使用したセルフ刺絡療法

糖尿病患者さんの利用する、血糖値測定用に出血を起こすファインタッチ(テルモ社)を使用した、刺絡療法を紹介しています。

ファインタッチを活用することで、井穴刺絡を簡易に行うことができます。注意点としては、下記の通りです。

  • 医療行為と認識し、セルフケアに限定して行う。
  • 出血を伴うため、手指の洗浄・消毒に努める。
  • 貧血気味な場合は控えて他の方法にする。

あくまでもセルフケアとして、自分に限定して用いるのであれば、刺絡療法にぴったりの優れた器具です。

刺絡療法の代わりにセルフケアの「爪もみ」

自律神経の調整にもつながる刺絡療法ですが、自分で行うのは少し難しいです。そこで、刺絡療法に近いセルフケアには「爪もみ」をオススメします。

爪もみの方法と指ごとの効果

爪もみでは気血を体の外に出すことは出来ませんが、爪の周り(井穴)を揉みこむことで、滞っている気血を押し流すことができます。

井穴刺絡では、部位によって対象の臓腑はありますが、爪もみで単純に末端を刺激することでも、しっかりと全身の効果は期待できます。

  • 親指:呼吸器の不調を改善。
  • 人差し指:消化器の不調を改善。
  • 中指:耳鳴り、難聴を改善。
  • 薬指:低血圧、低血糖、倦怠感を改善。
  • 小指:循環器の不調を改善。

爪もみで期待できる効果は、上記のようになります。

爪もみの方法

指の爪を挟むように、両側からつまみます。ギュッギュと揉んでも良いし、グリグリと揉みこむのも良いようです。

10秒〜20秒くらい、それぞれの指の爪もみをして、1日2〜3セットくらいが目安です。

おわりに

鍼灸治療の中でも、特殊な手法である刺絡療法をご紹介しました。気血のうっ滞は、全身の不調の引き金になることがあります。特に末端冷え性で手先や足先が冷たい人や、しもやけができる人は、爪もみなど自分でできるケアから取り入れてみてください。

体内の気血は、「体の全体、隅々まで」、「過不足なく巡る」ことが重要です。鍼灸の世界では、色々な工夫をこらしてこうした気血の巡りを改善し、様々な症状に対応していきます。

以上、刺絡療法を通して、鍼灸の世界の奥深さのご紹介でした。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

コメント