今回は、【至陰(しいん)】というツボについて、場所や、刺激することで期待できる効果などをまとめていきます。
至陰は逆子の特効穴として有名です。明確な理論は未だに明らかになってはいませんが、逆子の診断を受けた直後から、お腹の赤ちゃんが大きくなってからも至陰は有効です。
「大体28週以降から、●●頃まで逆子だと、帝王切開になる」と言われることが多いようです。至陰のお灸は、本当にギリギリでも逆子が改善した例もあるようです。
そんな至陰について、逆子対策以外の部分にも触れつつまとめていきます。
目次
至陰(しいん)の位置と所属経絡
至陰というツボの位置や、所属している経絡についてご紹介します。
至陰の位置
足の第5指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分、爪甲外側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点。
至陰は足の小指の、爪の付け根の外側にあるツボです。末端の、下に筋肉や血管も少ないような部位なのに、治療効果は抜群のツボです。東洋医学の不思議という感じです。
至陰の所属経絡と特徴
至陰は足の太陽膀胱経に属するツボです。膀胱経は顔面部の目の内側から始まり、頭を巡って背中から下半身の後面を通って足の小指に伸びる、とても長い経絡です。この長い経絡の終着点が至陰というツボです。
- 最長の経絡
先述した通り、膀胱経は経絡の中でも最長で、頭、首、背中、腰、足と各パーツを網羅するように伸びます。
経絡は不思議なもので、1つのツボを刺激すると、その刺激はツボが所属する経絡に広がります。その途中で、所属する臓腑にも効果を与え、治療効果を発揮します。
至陰は長い膀胱経の末端のツボなので、至陰への刺激は経絡にのって、体全体に波及すると考えられます。
- 冷えやすい足先
至陰は足の小指の先にあるツボなので、物理的にも一番冷えやすい場所です。また、経絡のつながりから考えても、陽の経絡(太陽膀胱経)が終わり、陰の経絡(少陰腎経)に至るツボなので、「至陰」と名付けられたとも言われます。
陽と陰の折り返し点でもある至陰を温めることで、どちらにも温熱刺激が伝わると考えられます。
至陰の治療効果
至陰を刺激することで期待できる治療効果をまとめます。至陰はとにかく温熱刺激を与えるような方法をオススメします。
逆子の治療・セルフケアで有効な例もある
確認も踏まえて触れますが、逆子の治療(便宜的に治療と表現します)に至陰は欠かせないほどのツボです。
至陰への温熱刺激は強力に下半身を温めてくれます。特に妊婦さんの場合、胎児が腹部を圧迫してしまうため、下半身の血流や水分循環が悪化します。足のむくみや静脈瘤などができるのはそのためです。
- 逆子の診断を受けたらすぐに取り組む
逆子のお灸は、逆子の診断を受けたらすぐに取り組みます。治療院でのお灸も大切ですが、ご自宅で自分でもお灸してもらいます。逆子のまま正産期を迎えると、帝王切開を前提にスケジュールされますが、その頃までお灸を続けて逆子が改善するケースもあります。
- 熱さを感じるまでやる
至陰へのお灸は、「熱い」と感じるほどの熱をしっかりと伝えることです。冷え切っている人だと、はじめのうちは全く熱さを感じません。繰り返しお灸をすることで、次第に温かさを感じるようになります。
「温かい」くらいの段階でやめず、「熱い」と感じるまで続けましょう。
- 継続しましょう
検診時に逆子が改善されていても、至陰のお灸を続けることは問題ありません。さらにひっくり返ることはありません。
至陰には下半身を強く温め、骨盤内の血流を改善する働きがあります。お腹の赤ちゃんのためにも、お母さんのためにも、時間がある時にお灸をしましょう。
泌尿器疾患に
至陰は膀胱経のツボなので、泌尿器疾患の改善も期待できます。
特に加齢や、冷えからくる夜間の頻尿には、至陰を温めることをオススメしています。
刺激が注意なツボも
妊婦さんの悩める症状に、色々な対策があります。検索をするとよく出てくるツボと、その取り扱いに注意が必要なものをご紹介します。
私は古典にのっとって、刺激が注意なツボは極力控えます。しかし、最近では、刺激しても問題ないという研究があるようです。ツボに興味があり、そのきっかけに鍼灸院や鍼灸師がいるのであれば、しっかりと確認の上で取り扱いましょう。
- 三陰交(さんいんこう)
三陰交については、別記事でもまとめたものがあります。婦人科疾患や、妊婦さんの冷えに効果的なツボとして紹介されることの多いツボです。
私は三陰交は正産期に入るまで極力刺激しません。長い靴下かレッグウォーマーで冷えないようにするようアドバイスをする程度です。温めるのであれば、湯たんぽなどでじんわりと温め、強い刺激は控えめがオススメです。
- 合谷(ごうこく)
合谷は妊婦さんの便秘にオススメのツボとして紹介されることがあります。しかし、合谷も正産期を迎えるまでは刺激を控えることをオススメします。
妊婦さんは腹部の圧迫や水分の不足によって便秘になりやすいですよね。調子が良い時に少し動いて、水分や繊維質の摂取を第一に意識してみてください。
おわりに
今回は逆子治療で有名な至陰についてまとめてみました。
私は妊娠・出産に関することには余計な口出しをしたくない性格なので、治療も積極的にはしません。しかし、至陰のお灸は経験穴ながらも、確かな効果があります。また、逆子かそうでないかによって、母体にも赤ちゃんにもかかる負担は大違いです。
妊娠さんだけでなく大切なのは、冷やさず、適度に動き、適度に食べ、休むことです。鍼灸はその一助に過ぎませんので。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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