「精」とは何か【東洋医学・鍼灸治療の基礎】

エネルギーのイメージ 気血水精
気・血の大元であり、生命力の源となる「精」というものがあります。精は両親から受け継ぐ「先天の精」に、飲食物から得る「後天の精」を補充する形で五臓の腎に貯蔵されています。加齢によって腎精は減少していき、老化現象につながります。若くても、性交渉や過労によって腎精を消耗すると、老化現象に似た症状が現れます。精を補充していくためにも、飲食物を正しく消化・吸収するため脾や胃の臓腑の働きも整える必要があります。

 

私たちの体を巡る「気」や「血」の大元には、「精(せい)」という生命力の源があります。

精は腎に貯蔵されていて、必要に応じて気に変わり全身を巡り、日々の活動力になります。こうした精から気に変わる場所が、下腹部の「丹田(たんでん)」のあたりにある「関元(かんげん)」や「気海(きかい)」のツボだと考えられます。また、下腹部は精を貯蔵する腎の働きが現れるエリアでもあります。

精が満ち足りていないと、気を生み出すことができず、そこから血を作ることもできません。つまり全ての源として重要なエッセンスです。

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生命力の源・根源である「精」

精は生まれる時に受け継ぐ「先天の精」に、自分で飲食をして「後天の精」を補充する形で、五臓の腎に貯蔵していきます。

両親から受け継ぐ「先天の精」

「先天の精」は、両親から受け継ぐ精です。端的に表すと「遺伝的な要因」とも考えられ、受精しお母さんの胎内にいる頃から腎に蓄積してもらいます。

先天の精が少ないと、胎児の異常や発育不良につながると考えられます。幼い頃に患いやすい病は、主に先天の精の不足によって起こります。とは言っても、それが全て両親の責任とは言えず、むしろ「神様から与えられる部分」と私は捉えています。

飲食によって得る「後天の精」

自分で飲食ができるようになってから、腎に貯蔵されている先天の精に補充する形で「後天の精」を補充していきます。そのため、正しく飲み食いすることは体にとって不可欠な生活習慣ですし、これを消化・吸収する脾と胃の臓腑も正常に働いていなければなりません。先天の精の不足によって、発育が遅かったり、幼児特有の症状があったりしても、後天の精を補充していくことで改善していきます。「大人になったら治る」と言われる症状は、こうした理屈で改善していくことになります。そのためにも、精の補充を心がけた食事や生活が必要です。

私たちは「精」を「気」に変えて活動している

先天の精、後天の精をあわせて腎に貯蔵しておき、必要に応じて気や血に変化させて私たちは活動しています。精を気血に変えるような物質の変化は、気の気化作用によって行なわれます。そのため、精・気はどちらも過不足なく、しっかりと働いていなければなりません。

精から全身を巡る気に変わる部位は、経穴(ツボ)でいうと「関元」や「気海」のある下腹部です。ちょうど、「臍下丹田」といわれ、武道やスポーツで重視する部位がこれにあたります。

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「精」の不足による腎精不足

「生命力の源」である精が不足すると、「腎精不足」という状態になります。腎精不足の指標となる症状は下記の通りです。

  • 発育・成長の問題
    • 小児の夜尿症(おねしょ)
    • 成長・発育の遅さ
    • 小さな頃の歯のトラブル
    • 関節・骨の成長痛
  • 老化現象
    • 白髪、抜け毛
    • 肌質
    • 足腰の弱さ
    • 冷え
  • 泌尿器・生殖器の問題
    • 尿漏れ、失禁
    • インポテンツ
    • 不妊

大きくわけると、成長・発育の問題、老化現象、泌尿・生殖器の問題の3点があります。これらの不調がある場合、五臓の腎の働きを整え、精を貯蔵する機能を高めなければなりません。そして、腎精を補充していく養生を心がけていきます。

腎精不足の詳しい症状や養生・改善のまとめはこちらへ

「精」は余ることがないの?

「精が余っている、過剰だ」という状態は基本的には考えられません。いわば生まれた時をピークに、何もしなければ精はどんどん減少していきます。それを、飲食によって補っていき生活しています。

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「精」は補充し、消耗を抑えるべし

日々減り続ける精なので、随時補充し、激しい消耗は避けなければなりません。

五臓の腎を整え「精」を補充する

  • 精を貯蔵しておく五臓の腎

五臓の腎には「蔵精(ぞうせい)」という精を貯蔵しておく働きがあります。例えば体に良いもの、精に変わるものをたくさん飲み食いしても、腎の働きが低下していると蔵精もうまくできず、精を貯蔵することができません。

腎は特に冷えに弱い臓器です。また、加齢や過労で負担がかかると働きが低下してしまいます。

▶︎五臓の腎の働きと養生まとめへ

  • 消化・吸収をつかさどる脾と胃

私たちは飲食したものから後天の精を得て、腎に補充していきます。その点からも、栄養バランスのとれた食習慣というのは重要です。また、それを消化・吸収する脾と胃の臓腑の働きも整える必要があります。良く食べ、良く吸収できる体を心がけることが、腎精を補い元気に過ごし続けるための大前提だと言えます。

▶︎五臓の脾の働きと養生まとめへ

「精」は加齢で減少していく

精は歯や骨、髪の毛を強くする素材でもあります。そのため、生後から幼児期を経て成長期を迎える頃まで、もっている腎精を歯や骨の成長、強化のために充てています。それらの成長・強化が終わる頃、精は一時充実しますが、そこからは加齢とともに減少していきます。

幼児期の不調が成長と共に改善するのは、こうした腎精の使い方や補充がうまくいった結果です。そして、成長が一通り済んだ後は、精は減少していき、生命力の終わりに向かっていきます。

「精」の消耗は性交渉と過労

加齢と共に減少する精ですが、日常生活で精を多く消耗するものもあります。それが、性交渉と過労です。

  • 性交渉の過剰=「房事過多」と言います

性交渉の過剰を「房事過多(ぼうじかた)」と言い、腎精を消耗する要因の一つになります。性交渉はいわば「先天の精を後に受け継ぐ」ための行為です。生物として重要な行為ですが、それも過ぎれば体を壊してしまいます。

「精子と卵子で考えると、性交渉で精を消耗するのは男性だけでは?」と考えがちですが、性交渉では男性も女性も精を消耗します。

  • 過労による精の消耗

「精も根も尽き果てる」の言葉の通り、過労によっても精を消耗してしまいます。これは性交渉の過剰のような直接的な消耗ではなく、活動力として気を多く生成・消耗していく中で、気の原料となる精も消耗していくからだと考えられます。

体が疲れるようなことをすれば、気も、その原料の精も消耗していくことになります。動きすぎ、働きすぎだけでなく、睡眠不足なども精を消耗する要因となります。

 

おわりに

生命力の源となる「精」は、生きている限り減少・消耗していきます。それを踏まえた養生としては、精を貯蔵する腎の働きを整えること、精を補充すること、精の激しい消耗を避けることの3点があります。東洋医学の世界では、アンチエイジングや美容鍼に、腎や精に関わる経穴(ツボ)を用いることがあります。若々しく、たくましく過ごすためにも、精の補充は欠かせません。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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