今回は体の【熱】の話を、東洋医学的に考えてみます。
風邪をひいたりして出る「熱」の他にも、「ほてる」とか、「のぼせる」なんて言いますよね。東洋医学では熱を、「実熱(じつねつ)」と「虚熱(きょねつ)」にわけて考えます。
- 実熱:実際に熱がある状態。
- 虚熱:体を冷ます力がない状態。
東洋医学では、熱がある時の対処法も実熱と虚熱でそれぞれ異なります。その辺りもまとめていきます。
実際に熱がある「実熱(じつねつ)」
実熱の代表的な症状
実熱は読んで字のごとく、実際に体に熱が生じている状態です。
- のぼせ、ほてりなどの熱症状がある。
- 暑がりである。
- 気持ちの昂りがある。
- 皮膚の炎症、できものが起きやすい。
- 口渇、冷たい物を欲する。
- 顔が赤い、目が充血している。
- 鼻水や尿、痰が黄色である。
熱の特徴である、体の上部にあがってくる症状や、腫れ・炎症症状が現れます。
実熱をセルフチェック
- 舌(ベロ)が赤く、苔が黄色くつく。
- 脈が速く、強い。
東洋医学的な身体診察方法に、舌診と脈診があります。舌は鏡で確認して、黄色く時に分厚い舌苔の下に赤い舌が見える場合、実熱です。
脈については、人と比べたり、日頃から確認したりしませんよね。実熱の場合、脈が触れやすく、早いのが特徴です。
熱が産まれる原因
実熱の場合は、体に熱が生まれるような原因があります。
- 風邪などによる熱
- 飲食の乱れ
- ストレス
体が風邪などの外敵と戦う際に起こる高熱も、実熱に分類されます。また飲食の乱れ、特に味の濃いものや辛いものの食べ過ぎによって体に熱がこもります。
ストレスも、気の巡りを悪化させ、体に熱をこもらせてしまいます。イライラしてカッカする人は要注意です。
体を冷やす働きの低下による「虚熱(虚熱)」
虚熱の代表的な症状
虚熱は、体を冷ます働きの低下によって熱が過剰になった状態です。
- 高熱は出ないが、微熱が続く。
- 暑がりである。
- 喉の渇きがある。
- 五心煩熱(手のひら、足の裏、胸の熱さ)。
- 寝汗をよくかく。
- 痩せ体質。
最大の特徴としては、夜間に起こる寝汗や「五心煩熱(ごしんはんねつ)」です。特に、布団から手足を出していたいタイプの人は、虚熱傾向だと言えます。
虚熱のチェック
- 舌(ベロ)が赤く、舌苔が少ない
- 舌にひび割れがある
- 脈はやや早く、弦を弾くような感じ
熱があるため舌は赤くなりますが、虚熱の場合は舌の苔が少なくなります。また、舌にひび割れのようなものが入ります。これは、熱を抑えるための水分(陰液)が少ないためです。
虚熱の原因
虚熱は、体の中の陰の力が減ってしまうことで、陽(熱)を抑える力がない状態です。東洋医学的には陰虚と言い、陰虚による熱を虚熱と言います。
体の中の陰は、津液(水)・血・精が陰液として体に満ちることで陽の働きを抑えます。
そんな陰液は、下記の要因で減少してしまいます。
- 過労
- ストレス
- 夜ふかし
- 加齢
また、陰液の一つである津液は水分なので、汗や尿、下痢などが続くと消耗されてしまいます。血が不足する「血虚(けっきょ)」の場合、夜ふかしや目の使いすぎでも消耗されてしまいます。精は過労や加齢、性交渉の過剰によって消耗されます。更年期障害の一つであるホットフラッシュも、加齢による精の消耗、そこからの虚熱と考えられます。
津液、血、精、体内の陰液のバランスが大切です。
五心煩熱と盗汗(寝汗)がカギ。実熱と虚熱の症状の違い
実熱と虚熱の症状を、表にまとめて比較してみます。
実熱 | 虚熱 | |
---|---|---|
熱 | 高熱も | 微熱 |
気質 | 昂り | 疲れ |
部位 | 全体、上部 | 手のひら、足の裏 |
汗 | 多くなる | 寝汗が多い |
同じ熱でも、違いがある部分のみ抽出してみました。虚熱が特徴的ですよね。手のひら、足の裏、胸の熱感である五心煩熱は東洋医学ならではの考え方です。
実熱と虚熱それぞれの治療
熱の症状だからといって、ただ冷やすだけではその場限りの対応になってしまいます。実熱、虚熱それぞれみていきましょう。
実熱の治療
実熱の治療には、
- 体の熱を冷ます
- 熱をたまらないような体にする
上記2点が大切です。
熱いお風呂、激しい運動は控える
体に熱がこもっている時、たくさん汗をかくと良さそうですよね。でも、汗をかくために体温が高くなるような入浴・運動の仕方だと、逆効果な場合もあります。
ぬるま湯にサッと浸かったり、軽い運動で汗をかいて、少しずつ熱を発散できると良いでしょう。
実熱に効果的な経穴(ツボ)
体の熱を冷ますことを、「清熱(せいねつ)」と言います。清熱のツボを紹介します。指で軽く押し込んでみたり、ペットボトル温灸で温めたりしてみてください。
曲池(きょくち)
曲池は大腸に属し、清熱の作用が強いツボです。肘のシワの外側端と、肘(頭)の間にあります。
涼性・寒性の食材で熱を冷ます
体に熱がある時、ただ単に冷たいものを飲み食いすれば良いわけではありません。食材の特性である、涼性・寒性を把握して、適量を心がけて食べるようにしましょう。
特に、夏野菜のようなみずみずしい食材が、体の熱を冷ます働きを持ちます。逆に温性・熱性の食材を取りすぎたり、味の濃いものや辛いものを食べ過ぎると、体に熱はこもっていってしまいます。
虚熱の治療
虚熱の治療には、
- 陰を補うこと。
- 陰液を消耗しないこと。
上記の2点が大切です。
陰液を消耗しない生活を心がける
東洋医学において、血・津液・精は陰液と言われます。体の陰液が少なくなると、陽を抑えることができず、熱を強く感じるようになります。
そのため、陰液を消耗しないよう、下記の項目に注意が必要です。
- 血虚(血の不足)
- 目の使いすぎ
- 夜更かし
- 月経
- 津液不足(乾燥)
- 水分の不足
- 汗のかきすぎ
- 精不足
- 過労
- 過度な性行為
虚熱に効果的な経穴(ツボ)
虚熱に対して、陰を補うような経穴(ツボ)を刺激することで、陰を高めて熱を抑えます。
太渓(たいけい)
太渓は腎に属するツボで、精を補い、陰を補います。足首の、内くるぶしとアキレス腱の間にあるツボです。細かく確認すると、脈が拍動(後脛骨動脈)しているのがわかると思います。
太衝(たいしょう)
太衝は肝に属するツボで、気血のめぐりに関係するツボです。足の甲の、親指と人差し指の間を足首になぞっていくと、指が止まるところがあります。具体的には、第1中足骨と第2中足骨のぶつかるところと言います。
陰を補う食材
陰液を補う食材として、
- 血を補う食材
- ほうれん草
- 落花生
- にんじん
- 津液を補う食材
- トマト
- 梨
- 精を補う食材
- 黒ごま
- 黒豆
- 牡蠣など貝類
- くるみなど木の実
それぞれのページにも詳しくまとめてありますので、「自分は」と思う人はこちらもどうぞ。


おわりに
熱やほてりを感じる時、体の中では熱が生まれている原因が異なる場合があります。
- 実際に熱が生まれている
- 熱を抑える力がなくなっている
原因が異なれば、当然治療法や、養生法は異なります。自分の体の状態を把握するのって、大事だなぁと改めて実感しますね。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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