東洋医学における五臓の肺の病証と症状。その治法のまとめ

肺病イメージ 五臓六腑

五臓の肺の病証として、「肺気虚」、「肺陰虚」、「風寒犯肺」、「風熱犯肺」、「痰湿阻肺」があります。まとめると、下記の通りになります。

  • 肺気虚:肺の失調+気虚
  • 肺陰虚:肺の失調+陰虚
  • 風寒犯肺:肺の失調+風邪+寒邪
  • 風熱犯肺:肺の失調+風邪+熱邪
  • 痰湿阻肺:肺の失調+湿邪

同じ肺の病でも、原因や現れる症状は様々です。しかし、その原因を特定し、それにあった治療を施すことが大切だと東洋医学では考えています。

 

東洋医学において、呼吸器全般の症状や、皮膚(体表)の状態の悪化を指標に五臓の肺の失調を疑い、治療を進めるとまとめました(「東洋医学の肺の働きと養生」)。また、こうした五臓六腑だけでなく、体を循環している気・血・水・精の過不足や停滞も、体調の変化につながります(「東洋医学の気・血・水・精のまとめ」)。

この記事でまとめるのは、こうした臓腑の失調プラス気・血・水・精の失調によって、体はどのような状態になるのか、その治療法はどのように考えるのかについてです。

五臓六腑の働きは、気・血・水・精が過不足や滞りなく循環する上で成り立ちます。また、その気・血・水・精も、五臓六腑の働きを受けて生成・循環しています。体に起こる症状や指標を捉え、どこの臓腑の問題なのか、どのエッセンスの過不足なのかを判断することで、より的確な治療を行うことができます。

その中でも、五臓の肺と気・血・水・精のバランスによって起こる病証と、その治法についてまとめていきます。

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東洋医学における五臓の肺の特徴をおさらい

五臓の肺には、「呼吸」、「宣発(せんぱつ)」と「粛降(しゅくこう)」という働きがあります。

  • 呼吸:鼻、気道、気管支、肺など、呼吸に関する器官は全て肺と捉えます。
  • 宣発:気や水を上・外に拡散・発散する働き。
  • 粛降:気や水を下・中に降ろす働き。

肺の働きが低下することで、こうした肺の持つ働きも悪くなってしまいます。

東洋医学では特に、鼻やのどの症状も全て肺の症状として捉える点が特徴的です。また、肺には体表にガードを張り巡らせる「衛気(えき)」をつかさどる働きもあります。肺の働きが低下すると、こうしたガードの働きも低下してしまうため、ウイルスや菌に弱くなってしまうと考えられます。

【肺気虚】肺の失調+「気虚」

五臓の肺の働きの低下と、気の不足である「気虚(ききょ)」があわさると、「肺気虚(はいききょ)」になります。

肺気虚の症状

  • 息切れがしやすい、疲れやすい
  • 声が小さい
  • 風邪をひきやすい
少しのことでゼーハーと息切れして疲れてしまう。風邪もひきやすい

五臓の肺は呼吸をつかさどる臓器です。そのため、気虚の代表症状である息切れや易疲労が、肺気虚においても強く現れます。また肺活量が低下し、発する声がボソボソと小さくなってしまいます。

肺は体表に衛気(えき)を張り巡らせ、外邪(がいじゃ)から身を守る働きもあります。肺気虚ではそうした体を防衛する働きも低下してしまうため、風邪をひきやすくなったり(易感冒)、花粉に悩まされたりします。

肺気虚の治法「補益肺気」。ツボは太淵がオススメ。

肺気虚を治療する方法を、「補益肺気(ほえきはいき)」と言います。これは、肺の気を補いましょう、という方法です。

治療として補益肺気を目指す場合、肺に所属する経穴(ツボ)である「太淵(たいえん)」を用います。

▶︎「気虚」の症状や対策をまとめた記事はこちら

【肺陰虚】肺の失調+「陰虚」

五臓の肺の働きの低下と、陰陽のバランスの悪化による「陰虚」があわさると、「肺陰虚」になります。

肺陰虚の症状

  • 空咳(乾いた咳)
  • のど、鼻の渇き、かすれ声
  • 痩せ傾向
  • 発熱、血痰が出ることも
痩せ型でコンコンと乾いた咳が止まらない人は要注意

五臓の肺は乾燥に弱い性質があります。そのため、陰液(ここでは肺を潤す津液)が不足してしまうと、肺陰虚の症状が現れます。陰虚によって相対的に陽が強まった結果、発熱や血痰を生じることもあります。

肺陰虚の治法「補益肺陰」。ツボは尺沢がオススメ。

肺陰虚を治療する方法を、「補益肺陰(ほえきはいいん)」と言います。これは、肺の陰を補いましょう、という方法です。

治療として補益肺陰を目指す場合、肺に所属する経穴(ツボ)である「尺沢(しゃくたく)」を用います。

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【風寒犯肺】肺の失調+風邪+寒邪

五臓の肺の働きの低下と、「風邪(ふうじゃ)」、「寒邪(かんじゃ)」があわさると、「風寒犯肺(ふうかんはんはい)」になります。ここでいう「風邪」、「寒邪」は、東洋医学の病因の一つである「外邪(がいじゃ)」です。

▶︎東洋医学における病因についてまとめた記事はこちらへ

風寒犯肺の症状

  • ゴホゴホとした咳
  • 薄白くシャバシャバした痰
  • 鼻水も透明から薄白く、垂れてくる
  • 悪寒・発熱
寒気のする風邪(かぜ)といったイメージです

風寒犯肺は一般的にイメージしやすい「風邪(かぜ)」の症状に近いものが多くあります。風邪(ふうじゃ)・寒邪の2つの外邪に侵入され、肺が失調している状態なので、咳・痰・鼻水といった症状に加え、寒がり・冷え・悪寒を伴います。また、痰や鼻水の色が薄く、粘りが少ないのも寒邪の影響によるものです。

風寒犯肺の治法「去風去寒・宣肺」。ツボは中府を温める。

風寒犯肺を治療する方法を、「去風去寒(きょふうきょかん)」、「宣肺(せんぱい)」と言います。これは、風邪と寒邪を取り除き、肺の機能(宣発)を取り戻しましょう、という方法です。

治療として去風去寒・宣肺を目指す場合、肺に所属する経穴(ツボ)である「中府(ちゅうふ)」を温めます。

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【風熱犯肺】肺の失調+風邪+熱邪

五臓の肺の働きの低下と、「風邪(ふうじゃ)」、「熱邪(ねつじゃ)」があわさると、「風熱犯肺(ふうねつはんはい)」になります。前項の風寒犯肺の場合と同じく、ここでいう「風邪」、「熱邪」は、東洋医学の病因の一つである「外邪(がいじゃ)」です。

風熱犯肺の症状

  • ゴホゴホとした咳
  • 黄色く、粘りのある痰
  • 鼻水も色がつき、鼻がつまりやすい
  • 発熱がある
  • のどが腫れる、痛みがある
  • 強い関節痛、頭痛を伴うことが多い
熱が出て、のどや関節が痛い風邪(かぜ)といったイメージ

風熱犯肺の場合、風寒犯肺と大きく違うのは熱・暑がりを伴う点です。また、鼻水や痰の状態も、黄色などの色味を帯び、粘りをもつようになります。

また、熱邪の影響で発熱を伴い、のどや鼻に炎症が起こります。冷たいものを飲むとすっきりするような風邪(かぜ)などが、風熱犯肺のイメージに近いと考えられます。

風熱犯肺の治法「去風去熱・宣肺」。ツボは魚際がオススメ。

風熱犯肺を治療する方法を、「去風去熱(きょふうきょねつ)」、「宣肺(せんぱい)」と言います。これは、風邪と熱邪を取り除き、肺の機能(宣発)を取り戻しましょう、という方法です。

治療として去風去熱・宣肺を目指す場合、肺に所属する経穴(ツボ)である「魚際(ぎょさい)」を温めます。

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【痰湿阻肺】肺の失調+湿痰

五臓の肺の働きの低下と、「湿邪(しつじゃ)」があわさると、「痰湿阻肺(たんしつそはい)」になります。風寒犯肺や風熱犯肺と同じく、痰湿阻肺の場合は外邪の一つである「湿邪」に侵されて起こる症状です。

痰湿阻肺の症状

  • 湿った咳が出る
  • 痰、鼻水が多くでる
  • 多くの場合、痰は白く、出しやすい
  • 喘鳴がある
痰が絡み、呼吸に合わせて「ゼイゼイ」と音がすることがあります

五臓の肺は乾燥に弱い性質を持ちますが、極端な湿も良くありません。肺に蓄積した湿・痰は鼻やのどに現れ、痰絡みや鼻水を起こします。また、呼吸によって気道が「ゼイゼイ」と音を立てる「喘鳴(ぜんめい)」も、痰湿阻肺の指標の一つです。

痰湿阻肺の治法「去痰去湿・宣肺」。ツボは尺沢がオススメ。

痰湿阻肺を治療する方法を、「去痰去湿(きょたんきょしつ)」、「宣肺(せんぱい)」と言います。これは、湿邪を取り除き、肺の機能(宣発)を取り戻しましょう、という方法です。

治療として去痰去湿・宣肺を目指す場合、肺に所属する経穴(ツボ)である「尺沢(しゃくたく)」を用います。

 

おわりに

五臓の肺の失調に加え、気・血・水・精の各エッセンスの過不足・停滞が起こることで、体には様々な症状が現れます。東洋医学では、その時出ている症状から、実際にどこの働きの低下が原因なのかを探り、それぞれに対する治療を行なっていきます。

身近な肺の症状というと、風邪(かぜ)があります。一言に風邪と言っても、熱が出ているのか、寒気があるのか、鼻水や痰の質はどうかなど、東洋医学においてはそれぞれ違うものと捉え、細かく診察します。そして、出ている症状に合わせた治療を行うことができるのが、東洋医学の強みだと言えます。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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