症状から五臓の肝の不調を知り、完治・根治を目指す東洋医学の考え方

肝2イメージ 五臓六腑

私たちの体を構成する、五臓六腑の一つである肝について、基本的な働きや養生をまとめました。

今回はその働きの続編として、実際に体に起こる症状を踏まえ、その時に五臓の肝がどのように調子が悪くなっているかを確認していきます。

肝の働きが悪くなると起こる症状として、下記の症状があります。

  • 情緒不安定(イライラ&うつ)
  • のどのつかえや胸の張り
  • 目のかすみ、疲れ
  • 爪の変形
  • 足のつり

これらの症状が、五臓の肝とどのように関係し、起こっているのかを確認していきます。

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情緒が不安定・のどのつかえ(梅核気)・胸の張りは肝の疏泄の低下によって起こる

ストレスによる不調は疎泄の低下と気滞が原因

五臓の肝は精神面・メンタル面と関係する臓器です。特にストレスやイライラといった「怒」の感情は肝の働きを狂わせます。

女性で、月経の前後や月経期間中に情緒が乱れる方は、こうした肝の働きの低下も考えられます。肝の働きが低下すると、肝の働きの一つである「疎泄(そせつ)」機能も低下します。疏泄の機能は気や血のめぐりに関わる働きなため、様々な症状が起こります。

  1. ストレス、イライラ
  2. 肝の働きが低下、不調に
  3. 気の流れをコントロールする「疎泄」の働きの低下
  4. 肝の気がうまく働かないため、ストレスにより弱くなる
  5. 気の流れはどんどん悪くなる(気滞など)

僕たちの体は気の働きによって活動しています。そうした気が、疏泄の働きの低下により滞る「気滞(きたい)」に陥りやすくなります。そして、血や水分(津液)は、気の働きによって生成され、流れているので、血にも水分にも影響します。

爆発的な怒りだけじゃなく、抑うつ傾向も肝の不調から

五臓の肝は「怒」の感情と関わるため、ストレスによって消耗し、多くの不調を招きます。しかし、イライラして爆発的に怒ることができる人もいれば、そうしたイライラが募って抑うつ傾向に陥る人もいます。

肝はそうした情緒の全般をつかさどる臓器です。怒りっぽい(易怒)、イライラしている、といった感情だけでなく、くすぶるように気にして落ち込んだり、総合的に情緒が不安定だったりするのも、肝の不調だと考えます。

のどのつかえ(梅核気)や胸の張りがわかりやすいサイン

「ストレスを感じやすい」や、「情緒が安定しない」というのは、あくまで主観的な症状です。「人と比べたらそうでもないかもしれない」といって症状が悪化する場合もあるし、そもそも症状は人と比べるものではなく、自分の中の変化として捉えるものです。

肝の疏泄の働きの低下や、それによる気滞によって、のどのつかえや違和感がある梅核気(咽喉頭異常感症)や、胸・脇・腹部の張りが起こります。

治療の前の問診でも、「のどがつかえる感じがして、えずきたくなる」や、「お腹が張って苦しい感じ」と訴える人が実際にいます。そうしたサインはその症状だけでなく、奥にある気の滞りや、五臓の肝の不調を表しています。

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頭痛やめまい、耳鳴りなど、上部に出る症状は肝の熱が原因

「怒」の感情がいきすぎると、肝に熱がこもり上部に症状が出ます。感情の乱れ以外でも、肝の働きが低下すれば、熱がこもり上部に症状が出やすくなります。

肝の働きの低下は疎泄の働きの低下につながり、気血の流れも悪くなります。頭痛やめまい、耳鳴り、不眠症など、一見すると、肝とは関係なさそうな症状も、元を辿れば肝の治療を要することがあります。

「怒り過ぎて目が血走る」のも肝の働きの乱れから

「目が血走るほどの怒り」というとよっぽどの怒りでしょうが、これには情緒をつかさどる肝と血、目との関係がうまく現れています。

肝と「怒」の関係に触れましたが、他にも、

  • 肝は目に開竅(かいきょう)する。
  • 肝に熱(火)がこもると上部に症状が出る。
  • 肝は血をためこむ。

肝のこのような特徴から考えると、「カッとなると目を血走らせて怒る」人は肝の働きが乱れています。具体的には、肝に熱(火)がこもっている状態と考えます。熱をおさえ肝の働きを整えなければなりません。

貧血など血に関する不調は、肝の蔵血の失調

肝には疎泄の他にも、「蔵血(ぞうけつ)」という働きがあります

肝に血が溜め込まれていて、肝のコントロールの元、全身に血が送られています。そのため、肝の働きの低下によって「血をためておく」、「血を送り込む」働きがうまくいかなくなります。

貧血はまず肝を整えて改善を

五臓の肝の働きの乱れにより、血をためておくことができず、また必要なところに送り込むことができなくなり、貧血症状が起こります。

貧血気味な人が鉄分などのサプリメントを飲んだり、鉄分が豊富な食事を摂ったりしますが、あわせて肝の働きを整えるとより効果的です。血をためておくことができないのに、血の元となる成分が豊富でも、貧血症状はなかなか改善しません。

ドライアイ・目のかすみは眼精疲労による血の消耗から

東洋医学では、目(眼球や視神経など)は五臓の肝と関わり、血によって栄養されると考えます。

目を酷使し眼精疲労がたまって、ドライアイや目のかすみが起こる頃には、血の消耗が進んでいます。現代はスマートフォンやパソコンなど、目を使う娯楽や仕事が中心になりました。また、睡眠不足なども重なると、目を休めることなく血を消耗し続けてしまいます。

手足の筋肉がつる・しびれる、爪が変形する

筋肉を栄養しているのも血です。また、五臓の肝は筋をつかさどるため、こうしたしびれやつりなどの筋肉の不調は肝・血の不調と捉えます。

運動などで損傷した筋肉を回復させるために血を使います。そのため、過度な運動や過労などでたくさん筋肉を動かせば、それを回復させる分の血を消耗することになります。筋肉のつりやしびれは、回復に必要な血が不足していて、栄養が足りていないサインです。

また、東洋医学では爪を筋肉の余りと考え、「筋余(きんよ)」と言います。爪にスジが入ったり、凹んだりするなどの変形は、肝や血の不調を表すサインです。

髪の毛のパサつきや弱さ

東洋医学では、髪の毛を血の余りと捉え、「血余(けつよ)」と言います。先ほどの爪を筋余と言うのと同様で、これで肝・血は爪とも髪の毛とも関わることがわかります。

髪の毛が乾燥してパサついたり、細く切れやすくなったりしていると、血が不足して栄養が届いていない恐れがあります。

髪の毛の状態は他にも、体内の熱や、腎の働きを受けて変化します。それぞれの働きや性質を確認し、髪の毛の状態から体の内面を知ることができます。

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肝の東洋医学的な治療・養生の確認

相生・相克関係の確認

  • 腎:肝の働きをサポートしてくれる(相生関係)臓器
  • 肺:肝の働きを抑制する(相克関係)臓器

上記の関係を踏まえると、肝の働きを整えるためには、腎の働きを高め、肺の働きを抑えることが重要です。

陰陽のバランスに大切な肝と腎

「肝腎(かんじん)」というように、体のバランスを整える肝と腎。

例えば年を重ねると、生命力の源である腎精(陰)は減っていきます。さらに、肝にためこんである血(陰)を消耗しすぎると、体内の陰液がどんどん減っていきます。

陰なる力が減っていけば、陽の過剰によるトラブルが起こります。

血を消耗するものは、下記の項目があります。

  • 目の使いすぎ
  • 筋の酷使
  • ストレス
  • 月経

肝を養う五味は酸味

肺を養う五味は、「酸味」です。ここでいう酸味とは、りんごや梅、レモン、お酢などの「酸っぱい」食材だと捉えてください。

酸味をとる上で大切なのが、必要以上に摂り過ぎないこと。過剰な酸味は胃腸の働きを低下させます。

肝の不調には飲食の見直しも必要

肝の不調を抱える人に多いのが、「やけ食い」や「偏食」です。ストレスで食べすぎる、というのもよく聞く話です。

肝の働きの低下は、気の働きの低下につながります。そして、気の働きの低下は、脾胃の消化の働きの低下にもつながります。消化・吸収を行う脾や胃の臓腑も、気の働きを受けて動いているためです。

消化・吸収がうまくいってないのに、さらに飲食物が入ってくると、脾や胃の負担はさらに増えてしまいます。ストレスによるお腹の張りや胃の痛みには、こうした原因もあるかもしれません。

とにかくストレスを避ける、ためない

「気の合う人」、「気に入ったこと」、それ以外は無理をしないことをオススメします。ちょっとしたストレスで、肝の働きは低下し、気の巡りは滞り、不調につながります。お酒を飲んでストレスを解消する人も、結局は肝にダメージを蓄積してしまいます。

まずはストレスから避け、自分を守ることを第一に考えましょう。

夜更かしでのスマホ・PCはNG

夜更かしも、スマホやPCのモニターをみて目を酷使するのも、どちらも血を消耗します。肝の不調、特に肝の血の消耗が激しい人は、モニターをみる時間を極力減らし早寝を心がけてください。テレビも同じです。

肝の調子を整える経穴(ツボ)

私たち鍼灸師が実際に使うツボをご紹介します。ツボへの刺激は、簡単なもので大丈夫です。

太衝(たいしょう)

肝に属するツボで、気の巡りや血の巡りに関わる重要なツボです。

足の甲にあるツボで、足の親指と人差し指の間を足首になぞっていくと、指が止まるところにあります。具体的には、第1中足骨と第2中足骨のぶつかるところと言います。

内関(ないかん)

内関は、イライラやストレスを感じた時に刺激しやすいツボなのでご紹介します。自律神経の乱れや、メンタルケアにも効果的なツボです。

手のひらの側の、手首のシワから指3本分肘に向かったあたり、指を握ると浮かぶ2本の筋の間にあります。

他にも、五臓の肝を整えるために私たち鍼灸師もよく用いるツボをまとめました。

▶︎五臓の肝の働きを整えるツボのまとめ

おわりに

実際にこうした症状を踏まえ、東洋医学では「証(しょう)」を立て、それに合った治療を行います。

▶︎東洋医学における五臓の肝の病証と症状、その治法のまとめ

治療はあくまで鍼灸治療や漢方がありますが、こうした症状を知り、日々の生活を心がけることが第一です。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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