気滞を改善する経穴(ツボ)として、「太衝」、「内関」をあわせてご紹介します。
体の中を巡る、気・血・水・精。それぞれ、多くても、少なくても不調につながるため、絶妙なバランスが保たれています。
このページには東洋医学的な体質タイプ【気滞】についてまとめていきます。気滞の特徴は、体内の「風通しが悪い状況」と言えます。
- 脹痛、膨満感
- げっぷやおならで緩解
- 情緒が不安定、イライラ
- 感情の変化で悪化する
気が滞った「気滞」の状態かをチェックする指標に使う項目を列挙してみました。特にストレスや、行き詰まって爆発しそうなモヤモヤ、イライラは、気の滞りの症状そのもの。当てはまる人は、要注意です。
「ストレスをためないような生活を」と、わかっちゃいるけど、難しいです。そんな気滞の症状を和らげるようなツボ、食生活などご紹介していきます。
東洋医学の「気滞」の症状とは?
「気が滞る」と書く通り、気の巡りが悪い状態を気滞と言います。鍼灸治療をする際、下記のような指標を気滞と捉え、治療にあたります。
- 脹痛、膨満感
- げっぷやおならで緩解
- 情緒が不安定
- 感情の変化で悪化する
これらはあくまで症状の土台になることが多く、「気滞」を判断するための材料です。
現れる身近な症状としては、
- うつ症状など【精神症状】
- 体がこりやすい【気・血の巡りの悪化】
- 便秘【体内の物質移動の停滞】
- 月経前症候群【気血の動きに伴う異常】
など、気の巡りが悪くなり、気分も優れない、そんな症状のベースに気滞はあります。
そもそも「気」って何?
気とは、体を巡る物質であり、4種類・5つの働きをもって体の機能に関わっています。特に気虚の場合、気の働きが低下してしまうため、様々な症状につながります。
気の4つの種類のおさらい
- 原気(げんき):活動力の源とも言える気。
- 宗気(そうき):呼吸によって得る気。
- 営気(えいき):体を栄養する気。
- 衛気(えき):体表をめぐるバリアになる気。
気の5つの働きのおさらい
- 推動(すいどう):成長、臓腑の活動、血や津液を送るなど、推し動かす働き。
- 固摂(こせつ):体液の漏出を防ぐ働き。
- 防御:外からくる菌やウイルス(外邪)の侵入を阻止する働き。
- 温煦(おんく):体を温める働き。
- 気化:気血水精の変化、代謝など体内で物質変化を起こす働き。
同じく気の不調である「気虚」の場合、こうした働きがなくなっていき、症状につながります。今回考える「気滞」の場合は、気の働きの1つである推動の働きの低下が一番わかりやすくなります。
気の滞りである「気滞」の原因
気滞に陥る原因には、五臓の肝の働きの低下、その中でも肝の「疏泄(そせつ)」作用の低下があります。
- 五臓の肝の不調、疏泄作用の低下。
- 気の巡りが悪化する。
- 気滞に陥る。
上記の順に悪化することが多いです。
肝の疏泄作用の失調
五臓の肝の持つ疎泄(そせつ)作用が、気の巡りをコントロールしています。そのため、肝の働きが弱くなったり、乱れたりすることは気滞につながります。
五臓の肝には、下記の特徴があります。
- 情緒をつかさどり、ストレスに弱い。
- 血の循環をコントロールし、目の疲れ、筋の疲れなどで消耗する。
ストレスと肝の関係から考える
ストレス社会と言われる現代では、多くの人が肝の不調を抱えていると考えられます。
五臓の肝に対応する感情は「怒」であり、イライラしたり、ムカムカしたりといった感情がいきすぎると、肝の不調につながります。こうした感情面と臓器の不調の関係性を認めるところは、東洋医学ならではの考えです。
肝にはもともと、情緒をつかさどる働きがあります。しかし、こうした「怒」の感情で肝の働きが低下すると、情緒をコントロールする働きも低下し、悪循環に陥ります。
こうした悪循環の中、肝の疏泄の働きも低下し、気の巡りはどんどん悪くなってしまい、気滞に陥ってしまいます。
血と肝の関係から考える
ストレスだけでなく、血の問題も五臓の肝を消耗させる原因になり、結果的に気滞につながります。
五臓の肝には、血を貯蔵しておく「蔵血(ぞうけつ)」という働きがあります。また、血をどこに、どれくらい送り込むかを決めているのも肝です。そのため、血に関わる生活習慣は、肝を消耗させてしまいます。
- 夜更かし(血は夜間に肝に戻るため)
- 目の使いすぎ(目は血に栄養されるため)
- 筋の疲労・消耗(筋も血に栄養されるため)
- 月経(体内の血のバランスが変化するため)
こうした血の消耗・不調が肝の働きを低下させ、肝の疏泄作用を低下させることで、気滞につながることもあります。
「気滞」を改善する一般的な対策
気滞を改善するためには下記の2点を意識してみてください。
- 気を動かすサポートをする。
- 五臓の肝の働きを整える。
体を動かすことで、気血を動かす
思い切り運動をした後、清々しい気持ちになった経験はありませんか?
滞っている気を動かすためには、やはり体を動かすのが一番手っ取り早い方法です。体の中の気血が、運動することで自然と循環します。また、運動して軽く汗をかくことで、停滞していた気が外に発散されます。「発散」する、という言葉の通り、滞っているものを動かし・発散することは重要です。
運動の他にも、カラオケなどで大声を出したり、お風呂で温まり軽く汗を流すと、体内の気を動かすサポートになります。
香り・アロマを楽しむ
アロマの香りでリラックスするのも気滞症状の改善の一つです。
特に柑橘系のアロマは、気分転換やリフレッシュの作用があります。柑橘系の酸味をイメージする香りが、五臓の肝を養うと考えられます。お部屋にお香を焚いたり、好みのアロマを取り入れたりして、気分転換のサポートにしましょう。
ただし、気滞は体内に起こる気の滞りです。香りを吸うのも大切ですが、滞っているところに新たに気(空気)を詰め込むのは、悪い印象です。深呼吸をするのも、しっかりと吐く息も意識して行い、体内の空気を入れ替えましょう。
「気滞」を改善する東洋医学の経穴(ツボ)と食事
鍼灸治療:疏肝理気
鍼灸治療で気滞の治療をする時、「疏肝理気(そかんりき)」という治法になります。これは、「肝の機能を取り戻し、気を通しましょう」という意味です。
気滞に効果的なツボをまとめた記事があるので、こちらをご参照ください。
その中でも、特にオススメのものをピックアップしてご紹介します。
太衝(たいしょう)
足の甲にあるツボ(経穴)です。足の親指と人差し指の間を足首になぞっていくと、指が止まるところがあります。具体的には、第1中足骨と第2中足骨のぶつかるところと言います。
肝に属する重要なツボで、気や血の巡りに強く関わります。
内関(ないかん)
前腕の内側(掌側)にあるツボです。指を握ると浮き上がる筋(腱)の間を、手首のシワから指3本分あがったところにあります。
気の流れや、自律神経の調整にも使うツボです。
気滞を改善する食材
ツボの刺激や漢方などに頼らなくても、普段の食事を一工夫するだけで体を整えることができます。
香りを楽しめる飲み物
気滞には、香りの良いものが効果的とされます。
少し香りのする紅茶やコーヒーなどを試してみてください。最近コンビニでは、ジャスミンティーを始め色々な種類の紅茶も置いています。何となく自分に合う香りを見つけ、リフレッシュに活用してみてください。
柑橘類の酸味
サッパリと甘酸っぱい柑橘類の果物も、滞った気を流すのにぴったりです。果物そのものでなくても、果肉や果汁の入ったゼリーなどの食品もオススメです。
酸味の強い食材は、過度に摂取すると胃の負担になることもあります。いずれにせよ摂取量には注意が必要です。
気滞の時に控えて欲しい食事の摂り方
気が滞り、イライラ、ムカムカすると、どうしても暴飲暴食に走りたくなります。実際に、そのような患者さんは少なくありません。
ドカ食いしない
「やけ食い」と言われる、ドカ食いはオススメできません。
気が滞る気滞では、胃腸の働きも停滞気味になります。そのため、ドカ食いをするとそのまま胃腸の負担となります。消化されない飲食物が体内に停滞することで、より気滞は進んでしまいます。
イライラして、やけ食い・ドカ食いするというのはよく耳にしますが、避けて欲しいリフレッシュ法の一つです。
味の濃いものを控える
食べる量だけでなく、内容にも注意が必要です。
味の濃いものも、気滞につながるためオススメできません。イライラすると、味の濃いものを、たくさん食べたくなりますよね。できれば、そこはグッと堪えてください。そこで堪えれば、気滞の症状は軽くなり、肝の働きも良くなります。
おわりに
気滞の症状は、下記のような順に悪化・発症して進行していきます。
- イライラ、情緒の乱れ
- 肝の働きの低下
- 肝の疎泄の働きの低下
- 情緒がより不安定に
- イライラ…
イライラが次のイライラを呼ぶ、いわゆる負の連鎖的に悪化していく傾向にあります。ストレス社会といわれる今、しっかり発散して、気の流れをよくしていきましょう。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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