症状から五臓の腎の不調を知り、完治・根治を目指す東洋医学の考え方

腎2 五臓六腑

私たちの体を構成する、五臓六腑の一つである腎について、基本的な働きや養生をまとめました。

今回はその働きの続編として、実際に体に起こる症状を踏まえ、その時に五臓の腎がどのように調子が悪くなっているかを確認していきます。

腎の働きが悪くなると起こる症状として、下記の症状があります。

  • 成長不良・老化現象
  • 泌尿器・生殖器の問題
  • 耳が遠くなる
  • 歯や骨、髪の毛が弱くなる
  • 不眠、睡眠障害

これらの症状が、五臓の腎とどのように関係し、起こっているのかを確認していきます。

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成長(発育)・老化に関わる腎と精

腎には、生命力の源である「精(せい)」を貯蔵する「蔵精(ぞうせい)」という働きがあります。

精には2種類あり、両親から受け継いで元々持っている生命力の源を「先天の精」、そこに飲食物から得る「後天の精」を補充して、生命力を維持しています。

▶︎精について詳しくまとめたページへ

成長・発育不良は先天の精の不足

両親から受け継ぐ先天の精が十分でない場合、元々の腎の働きも低くなります。小児喘息や夜尿症、疳の虫(かんのむし)などの、幼児期独特の症状は腎の働きの低さが原因の一つにあります。

そのため、これらの症状の多くは年齢を重ねるごとに改善し、自然と治癒することが多くあります。

成長痛や歯並びの悪化も要注意

五臓の腎は、骨や歯と関係の深い臓器です。

  • 膝や腰などの関節の成長痛
  • 歯並びが悪い、歯の生え揃いが遅い、歯がもろいなど

腎に蓄えられた精が、髄(ずい)となり、骨や歯を形成・強化しています。特に成長期には、日々全身の成長に精が使われています。過労や過負荷によって骨や歯に負担がかかると、その修復に精が追いつかず、こうした症状が起こります。

腎精の枯渇によって始まる老化現象

成長・発育だけでなく、腎精(ここでは先天の精・後天の精どちらも)が不足すると、老化現象が現れます。反対に、加齢によって腎の働きが低下していくことで、精をためておく蔵精の働きが低下することもあります。

前項で精と歯や骨の関係に触れましたが、加齢によって歯が抜け落ちたり、骨が弱くなったり(骨粗しょう症など)するのは、腎精が枯渇した結果です。

更年期障害による症状も腎精の枯渇から起こる

 

更年期障害でのぼせやほてり、ホットフラッシュなどの熱症状が起こります。その原因にも、腎精の枯渇は関わります。

  1. 加齢により腎精が減ってくる。
  2. 腎の陰が減り、体の陽が相対的に強くなる。
  3. 熱、上昇する症状が出る。

腎精は体の陰を高める腎陰としての役割もあるため、腎精が不足すると陽を抑える力が弱まり、上部に熱の症状が出ます。

耳が遠くなるのも腎精不足の指標

腎の働きは耳の状態に影響します。年を重ねて、耳が遠くなるのも腎精が枯渇が原因です。

他にも、耳鳴りが怒ったり、平衡感覚にも影響し、ふらついたりします。年をとって足元がおぼつかなくなるのは、こうした腎精の影響が考えられます。

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泌尿器・生殖器の働きは腎と膀胱の協調

尿と腎の関係

泌尿器の機能は、西洋医学と同様に腎と膀胱が関わります。五臓の腎が体の余分な水分を膀胱へ送り、排尿・蓄尿の切り替えやタイミングなどの指令を出しています。膀胱はその指令を受け、尿を蓄えておく袋です。

  • 幼い頃のオネショやおもらし
  • 高齢になってからの尿漏れ
  • 頻尿・無尿
  • 失禁

発育段階や、加齢に応じて起こる泌尿器関係の不調にも、腎の働きが関わります。

生殖器と腎の関係

腎には、蓄えている精を次世代に受け継ぐため、生殖器をコントロールする働きもあります。そのため、生殖器にまつわる不調は腎の働きの低下が原因の一つにあります。

女性では月経の異常、男性ではインポテンツなど、男女共通では不妊症などの不調の根底に、腎の働きの低下があります。

 

骨や歯、髪の毛の調子は腎の様子を知るサイン

腎の働きを確認しやすいのは、骨や歯、髪の毛です。先述した通り、骨や歯は腎に蓄えられている精が、髄となって栄養しています。

髪の毛を腎の調子が表れる五華(ごか)と言い、年齢不相応な白髪や抜け毛は腎の働きの低下のサインです。また、過労や寝不足で髪の毛が弱くなったり、抜けやすくなる場合も、腎の精が不足している場合があります。

 

寝る子は育つ、睡眠障害と腎の関係

小さな子どものように、動き回って、倒れるように眠るのも理想の体の働きです。「寝たい時に寝られる」のも、健康な証であり、そこにも腎の働きが関係します。

更年期障害の項目でも触れましたが、腎には体を陰の方向に傾ける働きがあります。夜になり、リラックスし、眠りに向かう時には体内の陰が強まり、精神を落ち着かせ、体を休ませようとします。

しかし、腎の働きが低下していると、休みたい時に体を陰の方向にもっていけません。「布団に入っても手足や頭がほてって寝られない」、「眠いのに頭は冴えてしまっている」など、腎の働きが低下して、睡眠障害が起こることがあります。

 

腎の東洋医学的な治療・養生を確認

腎は冷えに弱い臓器

腎は冷えに弱い臓器です。特に足腰の冷えは腎を直接消耗してしまいます。

元々、生命を維持する上で理想の体温(36度くらい)があります。そこから外れることは、生命維持をする上で大きく負担になります。生命力に関わる腎だからこそ、冷えには注意が必要です。

相生・相克関係の確認

  • 肺:腎の働きをサポートしてくれる(相生関係)臓器
  • 脾:腎の働きを抑制する(相克関係)臓器

上記の関係を踏まえると、腎の働きを整えるためには、肺の働きを高め、脾の働きを抑えることが重要です。

深呼吸で吸う空気は腎まで届く

肺についてまとめた記事でも触れましたが、深く息を吸い込むと、そこから得る気は腎まで届きます。これには、肺の「粛降」という働きと、腎の「納気」という働きの2つが重要になります。

たまに深呼吸を意識すると良いと言われるのも、こうした考えがあるからです。

甘いものを食べると脾が病み、腎も傷む

東洋医学の古典に、「甘いものを食べると髪が抜け落ち、骨が弱くなる」とあります。これは、脾を栄養しすぎると腎を抑制する働きが強まるためだと考えられます。

「甘いものを飲み食いすると歯と骨が弱くなる」と、小さい頃に注意されたのをよく覚えています。

腎を養う鹹味と種

腎を養う五味は、鹹(しおからい)味です。漢字は難しいですが、読み通りの「しおからい」味と考えて大丈夫です。海藻類(ひじき、昆布など)、貝類など、海の幸は自然なしおからさがありがオススメです。

また、木の実や種も、次の世代に受け継ぐためのエネルギーが詰まっています。そういった意味でも、精を受け継ぐ腎の働きを高める効果が期待できます。くるみやくこのみ、銀杏などがあります。

性行為の過多に気をつける

性行為は、直接的に蔵精してある精を消耗する行為です。回数が増えれば、それだけ腎精は消耗されていきます。何事も、ほどほどが良いということです。

腎の調子を整える経穴(ツボ)

私たち鍼灸師が実際に使うツボをご紹介します。ツボへの刺激は、簡単なもので大丈夫です。

太渓(たいけい)

内くるぶしの一番出っ張っているところとアキレス腱の間にあります。冷え性で足の冷えが気になる人は、太渓を温灸してあげると効果的です。

足湯も効果的なので、お湯をくるぶしより上まではって足を浸けましょう。

 

 

関元(かんげん)

関元

おへその下、指の幅4本分下がったところにあります。「丹田(たんでん)」と言われるのは、この辺りです。

生命力や、力の源はこの丹田に集まり、全身に行き渡ります。

 

おわりに

実際にこうした症状を踏まえ、東洋医学では「証(しょう)」を立て、それに合った治療を行います。

▶︎東洋医学における五臓の腎の病証と症状、その治法のまとめ

 

治療はあくまで鍼灸治療や漢方がありますが、こうした症状を知り、日々の生活を心がけることが第一です。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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