「血」とは何か【東洋医学・鍼灸治療の基礎】

血のイメージ 気血水精
東洋医学における「血」は、西洋医学で考える「血液」と大きな違いはありません。血脈(血管)の中を流れ、臓腑や各組織を栄養しています。血は臓腑と気の働きのもと、飲食物から生成され、貯蔵・循環しています。東洋医学では、出血以外にも目の使いすぎなどで血を消耗すると考える点が特徴的です。また、血は精神を安定させる働きもある点が東洋医学独特の概念です。

 

今回は「血」についてご紹介します。

東洋医学において「血」は「ケツ」と呼ばれることが多いです。「気(キ)」と「血(チ)」だと聞き分けが難しいからかな、と考えたことがありますが、理由はわかりません。

読みは独特ですが、その働きは西洋医学と大きな違いがありません。血管中(東洋医学では「血脈」と言います)を流れ、体を栄養しています。血を生成・循環させるためには、臓腑や気の働きが必要です。それぞれ、少し詳しく確認していきましょう。

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「血」の働きと成り立ち

血の働きを確認

血の働きを少し専門的に表すと、血脈を「営気(えいき)」とともに流れ、各組織を濡養しています。

営気とは気の一つで、体を栄養する気を指します。この営気を含めて血なのか、血と営気は別なのかは定かではありませんが、血脈中を流れて各所に栄養・潤い・熱を届けます。

また、血には精神を落ち着かせ、安定させる働きもあります。血は陰陽で区別すると、陰に属します。精神のたかぶりや興奮といった陽を抑えるのに、血の陰の働きが作用します。

血の成り立ち

血は気の働きを受けて生成され、循環しています。そのため、血の状態は気の量や流れに大きく影響を受けます。具体的には、下記の3点があります。

  • 血は気の気化作用によって生成される。
  • 血は気の推動作用によって血脈を流れる。
  • 血は気の固摂作用によって漏れずにいる。

また、こうした気の働きを受けて血として流れる以前に、飲食するものから血の元となるものを得る必要があります。そのため、飲食物を消化・吸収する五臓の脾や六腑の胃といった臓腑の働きが正常であることも重要です。

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「血」の不足・停滞による血虚と血瘀

血が不足・停滞することで起こる不調に、「血虚」と「血瘀」があります。治療の際には特に、血のどの働きに問題があるのかに着目します。

血虚(けっきょ)

血が不足している血虚の状態では、組織の栄養不足や乾燥に近い症状が現れます。血虚の指標となる症状は下記の通りです。

  • 顔が青白い。
  • めまいや立ちくらみがする。
  • 手足の冷えやしびれがある。
  • 爪や髪がもろく、弱い。
  • 目の疲れを感じる。

特に顔色や眼瞼結膜の赤みが薄い場合、血虚だと判断するところは西洋医学の貧血と似通っています。めまいや立ちくらみ、手足の冷えに関しても、体の隅々まで血を巡らせることができていないことで起こる場合があるため、血虚を疑う指標になります。

また、東洋医学において髪の毛は「血余(けつよ)」と言い、血の余りでできているものと考えます。そのため、髪の毛のパサつきや弱さは、血の不足を疑う重要な指標となります。爪に関しても同様、爪を「筋余(きんよ)」と言い、筋の余りだと捉えています。「筋は関係ないのでは?」と思いがちですが、筋を栄養するのは血です。そのため、爪にもろさがあったり、スジが入っていたりすると、血の不調を疑います。

こうした髪の毛や爪の他に、目を栄養するのも血の役割の一つです。そのため、目を酷使するような生活をしていると、血虚に陥ることがあります。パソコンやスマートフォンが身近な現代では、血虚のリスクが高まっていると言えます。

血虚についてまとめた記事はこちら

血瘀(けつお)

血が停滞し循環が悪くなっている血瘀の状態は、血色の悪さや独特の痛みとして現れます。血瘀の指標となる症状は下記の通りです。

  • 血の色が暗い・血塊が混じる。
  • 顔色が青紫で血色が悪い。
  • 刺すような痛みがある(刺痛)。
  • 同じ部位が長期にわたって痛む(固定痛)。
  • 夜間に痛むことが多い(夜間痛)。
  • 触られたくない(拒按)。

血瘀を端的に表すと、どこかにぶつけてできる「青タン」のイメージです。血が鬱滞し、痛み、触られたくない状態が血瘀です。女性では月経時の痛みや、月経血に血塊(ブヨブヨした塊)が混じる場合、血瘀の状態だと考えられます。

本来は栄養を運び終え、組織から不用物を回収した血液は再循環して戻っていかなければなりません。血瘀では、そうした不用物の多い血が停滞し、悪さをしている状態です。

血瘀についてまとめた記事はこちら

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「血」の生成・循環を良くするには?

血の不足である血虚、停滞の血瘀を予防・改善するために必要なものをご紹介していきます。

血を生成しよう

  • 血の元となる気を生成する

先述した通り、血は気の気化・推動・固摂作用を受けて、飲食物から血となり、血管を漏れずに流れ循環しています。気の不足や停滞はそのまま血の不足につながります。

例えば一般的な貧血症状であっても、「レバーを食べれば血になる」わけではありません。その貧血症状の根底に気の不足がある場合、第一に気を補うような治療が必要です。

▶︎「気とは何か」のまとめへ

  • 脾と胃の働きを整えて、食事からの気の生成を助ける

血は主に、飲食したものを五臓の脾と六腑の胃が消化・吸収して生成されます。そのため、下記の2点は特に重視しなければならない項目です。

  • 適切な飲食。
  • 正常な脾胃の働き。

良いものを食べ、それを十分に消化・吸収することが、血を生成するために不可欠です。

▶︎五臓の脾の働きと養生まとめへ

血を循環させる肝と心

  • 血を送り出すポンプの役割の心

血を物理的に循環させているのは五臓の心です。その点、東洋医学・西洋医学どちらにおいても心は重要な臓器と言えます。

東洋医学ではさらに、心は精神活動の取りまとめとしての役割を持ちます。「ココロ」の側面だと言えます。血には精神を安定させる働きがあるため、血の不足や停滞はそのまま、「ポンプ」としての心と「ココロ」としての心どちらの不調にもつながります。

▶︎五臓の心の働きと養生まとめへ

  • 血を貯めておき、分配量を決める肝

どこの器官に、どれくらいの血を送るかを決めているのは五臓の肝です。また、血を貯めておく働きもあります。肝の働きの低下は、血の不調と密接に関係してきます。

血虚についての項目でも触れたように、血は爪や髪の毛、目を栄養しています。これらの特徴をおさらいすると、下記の通りです。肝との関係もあわせてまとめてみます。

  • 爪:筋余。肝は筋をつかさどる臓器で、筋は血に栄養される。
  • 髪の毛:血余。血が不足・停滞しているとパサついてコシのない髪の毛に。
  • 目:肝が外界とつながる部位。肝の不調は目に現れ、目は血に栄養される。

また、肝も精神面(特にストレス、イライラ)や情緒と関係のある臓です。精神安定作用のある血の過不足は、肝の働きにも作用し、情緒の乱れにつながってきます。

▶︎五臓の肝の働きと養生まとめへ

血の消耗を避けよう

血は補充し、循環させるだけでなく、消耗を抑えることも大切です。血は特に目の使いすぎや夜更かしなどの睡眠不足によって消耗されます。もちろん単純に血が出ていくことも血の消耗につながります。そのため女性の月経時には、全身の血のバランスが乱れることで様々な不調が起こります。

 

おわりに

東洋医学で考える血は、気の働きに加え、五臓六腑の働きを受けて生成され、漏れずに循環しています。そのため、血の過不足・停滞による症状を改善するのに、ただ血を補えば良いとは限りません。「レバーを食べてください」というのは簡単ですが、「食べたレバーがしっかりと血になる体」にするために、五臓六腑の働きは重要だということですね。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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