血虚の原因を、生成不足なのか、消耗が激しいのか、貯められないのか、など明確にする必要があります。その上で、五臓や気の治療を行うことで、血虚も改善します。
血虚に効果的な経穴(ツボ)として、「血海」、「三陰交」をご紹介し、血を補う生薬でもある「棗(なつめ)」にも触れます。
体の中を巡る、気・血・水・精。それぞれ、多くても、少なくても不調につながるため、絶妙なバランスが保たれています。このページには東洋医学的な体質タイプ【血虚】をまとめていきます。
東洋医学において、下記のような症状がある場合、血の不足である血虚を疑う指標になります。
- 顔色が蒼白
- めまい、立ちくらみ
- 手足の冷え、しびれ
- 爪や髪がもろくなる
- 眼精疲労
これらの症状がある場合、血を補うような治療が必要になります。また、血が不足する原因も考えなければなりません。
- 血の単純な不足。
- 血の生成不足。
- 血の消耗が激しい。
- 血の貯蔵の乱れ・漏れ。
原因にあわせて、それに関わる五臓や気の治療をすることで、血虚の症状に対応していきます。
「血虚」の症状とは? 血の不足でどうなる?
体の中の血が虚している(足りない)状態を「血虚(けっきょ)」と言います。
下記の項目が、血虚の代表的な症状の指標とされています。血のが足りない状態なので、一般的に言えば「貧血」に近い状態になります。
- 顔色が蒼白
- めまい、立ちくらみ
- 手足の冷え、しびれ
- 爪や髪がもろくなる
- 眼精疲労
顔色やめまい、冷えは貧血の症状としても有名なので、理解しやすいですね。しびれや、爪・髪の毛の問題、眼精疲労は特に東洋医学ならではの考え方です。
まずは東洋医学における血について、確認していきましょう。
そもそも、東洋医学の考える「血」とは
おさらいとして、東洋医学における「血」について、その働きや成り立ちを確認していきましょう。
「血」の東洋医学的な働き
東洋医学的な血の働きとして、代表的なのは下記の2つです。
- 体の各器官に栄養を運ぶ。
- 体を潤す。
これは東洋医学も西洋医学も大差ありません。
血の成り立ち
血は、主に飲食物によって作られています。少し専門的にまとめると、下記の流れになります。
- 飲食物から、「水穀の精微」というエッセンスを抜き出す
- 水穀の精微は、「水」と「後天の精」になる
- 後天の精は、「営気」と「衛気」になる
- 営気と水が合わさり、血となる
しっかりとした食習慣は、血を生成するためにも不可欠です。また、食べたものから栄養を取り出す脾や胃の臓腑の働きも正常である必要があります。
また、そうして生成された血は、五臓の肝に貯蔵されています。
気と血、水(津液)の関係
しっかりとした食習慣や、それを消化・吸収する脾胃の働きも大切ですが、血が生成され、機能するためには、「気」の働きが必要です。気には、血に関する下記の働きがあります。
- 気が血を生成する(気化作用)
- 気が血を流す(推動作用)
- 血を漏らさない(固摂)
私たちの体の中に、血を溜め込んでおくために、いくつかの臓腑や気の働きが関わることがわかります。
血虚による症状
血虚による症状をもう一度確認してみます。東洋医学ならではの考え方などもあわせてご紹介します。
顔色が蒼白、めまい、立ちくらみ
顔色やめまい、立ちくらみに関しては、西洋医学における貧血と共通している点です。頭部や顔面部まで血を送り込めていない(瞬間的に)ことで、これらの症状が現れます。
特に顔は五臓の心の働きが現れる「五華(ごか)」です。重力に逆らって血を送り込むことができないため、顔色が蒼白になると考えられます。
手足の冷え、しびれ、つり
血虚によって手足を温め、栄養することができなくなると、冷えやしびれ、筋肉のつりにつながります。
正座をして足がしびれたことがありませんか? この場合は物理的に血管が圧迫されてしびれが起こると考えられますが、血が不足している場合も同様にしびれが起こります。
足がつるのも、血の不足が原因と考えます。筋を栄養する血が不足していることで、痛みを伴うつり方をしてしまいます。
爪や髪がもろくなる
爪や髪の毛を栄養しているのも血です。爪にボコボコや筋が入るような変形、薄く弱くなるような変化がある場合は、血が不足しているかもしれません。同様に、髪の毛が弱く細くなる場合も、血虚を疑う指標になります。
東洋医学において、髪の毛は特に「血余(けつよ)」と言い、血の余りでできているものと考えられています。
眼精疲労、睡眠不足
目を栄養するのも血の働きです。そのため、目を酷使するような生活は血虚を進行させてしまいます。
夜更かしをしてテレビやパソコンを見ていると、目の疲労につながり、血虚が進行してしまいます。生活習慣の乱れは、こうしたところから体を崩していきます。
血の不足である「血虚」になる原因
血虚の原因は、血の生成不足か、血の消耗が激しいかの、生産と消耗のバランスによって起こります。
血の生成不足
- 臓器の働きの低下
- 気の働きの低下
上記の項目によって血の生成が追いつかないと血虚になります。
血の成り立ちの項目でも触れましたが、血は気の働きを受けて生成され、循環しています。特に気が不足する「気虚(ききょ)」の場合、血を生成する分の気も不足しているため、「気血両虚(きけつりょうきょ)」という状態に陥ることが多くあります。
また、こうした気や血は五臓の正常な働きが前提となります。血は特に五臓の肝・心・脾が関わります。
- 肝:血を貯蔵し、分配量を決定する。
- 心:血を送り出すポンプ。
- 脾:飲食物から血を生成し、血を漏らさぬようにする。
出ている症状から、どの臓の影響かを判断し、五臓の治療を行うことで血虚が改善することもあります。
血の消耗が激しい
女性は特に、月経や出産、授乳などで血を消耗することが多くあります。体内の血の量が変化するため、血虚など血の不調には注意が必要です。
実際に出血を伴わなくても、運動による筋疲労や夜更かし、眼精疲労によって血を消耗してしまいます。筋や目を酷使するような生活は、それらを栄養する血を消耗し続けてしまいます。
また、夜更かしも血の生成を妨げる要因になります。血は特に夜に生成され、体を循環していた血は夜に肝に還ると考えられています。テレビやパソコンなどの夜更かしは、目も酷使するため、余計に血を消耗してしまいます。
「血虚」を改善する対策
血が不足する血虚なので、血を補うこと、血の消耗を避けることが一番簡単な対策になります。
食事での対策
血を補うとされる食材に、レバーやほうれん草、プルーン、人参などがあります。これは、西洋医学的な貧血の時の食養生と似ていますね。
また、血虚の人は香辛料の効いた料理や、味の濃いものは控えましょう。体内に熱を過剰に産むと、血を消耗してしまいます。血虚が促進されてしまう可能性があります。
目の疲れを避ける
ドライアイ、目の疲れが気になる方は、目の疲れを避けるように意識してみてください。デスクワークでPCと向き合い、暇な時間にスマホを見ると…視力や目を栄養するのに血を使いすぎて、血虚につながります。
「血虚」を改善する経穴(ツボ)
鍼灸治療で血を補う補血の経穴(ツボ)をまとめました。その中でも、特にオススメなものをピックアップして紹介します。
血海(けっかい)
膝のお皿から指3本分上、やや内側にあるツボです。「血の海」と書くほどの、血虚を改善する重要なツボです。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしから指4本分あがった(膝寄り)、すねの骨の内側にあるツボです。
特に女性は月経に伴う血虚が多くなります。三陰交は月経の血量や痛みも抑えてくれる婦人科の特効穴と言われるほどのツボです。
血虚を改善する補血の食材
ツボの刺激や漢方などに頼らなくても、普段の食事を一工夫するだけで体を整えることができます。
ほうれん草
ほうれん草は鉄分が豊富で、一般的にも血を補う食材として周知されていますね。赤血球を作るのに必要な葉酸も含まれています。
ピーナッツ
落花生(ピーナッツ)も、血を補う食材としておすすめです。昔、「ピーナッツを食べ過ぎると鼻血が出る」と言われませんでしたか? つまり、そういうことです(迷信です)
ちなみに、殻がついているものが落花生、殻を剥いたらピーナッツ。どちらも同じものです。
ナツメ
漢字では「棗」、生薬(漢方)では「大棗」として、目にしたことがあるかもしれません。ナツメはスーパーで、ドライフルーツにして売ってますね。
補気にも補血にも有効で、有名な「葛根湯」にも含まれています。
おわりに
血の構造を知ると、日頃の食生活の大切さを再認識します。特に女性には、血の問題は一生ついてまわると言っても過言ではないくらい。「血気盛ん」とまではいかなくとも、日々補っていきましょう。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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