特に鍼灸治療では、ツボの持つ1つずつの治療効果だけでなく、経絡を通した治療効果も踏まえて用いることで様々な不調に対応します。
この記事では、【経絡の流れ】を紹介します。
- 経穴:いわゆる、ツボのこと。
- 経絡:ツボの並ぶ線路というイメージ。
私たちの体には、14本の経絡があり、その上に361個の経穴があります。
経絡の流れを知ることで、下記のようなメリットがあります。
- 経絡上の不調に対応できる。
- 経絡に関係ある臓腑に対応できる。
- 刺激しやすいツボを見つけられる。
セルフケアでできる温灸やツボ押しも、経絡の流れを理解していればより効果的になります。
それでは、みていきましょう。
目次
督脈の経絡の流れ
督脈の概要
体の後ろ側、主に背骨の上を通る経絡です。「陽脈の海」と言われ、体の陽を統括する役割があります。

背中側が陽、お腹側が陰なんです。
全28穴の経絡です。
督脈はお尻から始まります。
背中の真ん中(背骨上)を上にあがります。
後頭部にもツボがあります。
最後は口元で終わります。
督脈の経絡が通る部位
- 胞中(小骨盤腔)
- 会陰部
- 尾骨、仙骨
- 背骨
- 百会
経絡と治療
- 頭痛、首痛
- 呼吸器疾患
- 消化器疾患
- 泌尿器、生殖器疾患
督脈に所属する経穴(ツボ)
任脈の経絡の流れ
任脈の概要
体の前、正中線(ど真ん中)を通る経絡です。「陰脈の海」と言われ、体の陰を統括しています。

陰脈の海だけど、温めた方が良いんです。
全24穴の経絡です。
任脈は「会陰(えいん)」というお股にあるツボから始まります。画像では省いてあります。
体の前面の、正中線上をあがっていきます。
顎のあたりに終わります。
任脈の経絡が通る部位
- 胞中(小骨盤腔)
- 会陰
- 前正中線
- 目
経絡と治療
- 泌尿器、生殖器疾患
- 消化器疾患
- 心疾患
任脈に所属する経穴(ツボ)
手の太陰肺経の経絡の流れ
肺経の経絡の概要
肺に属し、大腸を絡う(まとう)経絡です。肺と大腸は表裏関係にあります。
胸の前から上腕、前腕を通り、親指に終わる全部で11穴の経絡です。

風邪や喘息だけでなく、花粉症や鼻づまりにも!
手の太陰肺経は、体の中心に起こる脈気を受けて、胸元から始まり全身の経絡につながります。
上肢の真ん中、やや外寄り(橈骨寄り)を手に向かいます。
親指の先に終わります。
肺経の経絡が通る部位
手の太陰肺経は、体表以外ではこんなところを通ります。
- 大腸
- 胃(噴門部)
- 横隔膜
- 肺
- 気管・喉頭
経絡と治療
- 風邪、喘息、鼻炎など呼吸器疾患の全般
- 消化器疾患(特に腸)の問題
- 胸郭出口症候群(手のしびれ)
手の太陰肺経に所属する経穴(ツボ)
手の陽明大腸経の経絡の流れ
大腸経の経絡の解説
大腸に属し、肺を絡う経絡です。肺と大腸は表裏関係で、密接な関係があります。
手の示指から始まり、前腕、上腕、肩を通り、鼻の横で終わる全部で20穴の経絡です。

大腸経は腸の問題の他、アレルギー、鼻の不調、お肌の不調にも効果があります!
手の陽明大腸経絡は人差し指の先に始まります。
前腕、肘の外側(橈側)を肩に向かい伸びます。
肩を通り、顔に向かいます。
経絡の始まりである側と反対側の鼻の横「迎香(げいこう)」のツボに終わります。
大腸経の経絡が通る部位
手の陽明大腸経はこんなところを通る経絡です。
- 大椎(Th7下)
- 肺
- 横隔膜
- 大腸
- 下の歯
- 口
- 鼻
経絡と治療
- 消化器疾患(特に腸)
- 顔面部の不調(チック、顔面神経麻痺など)
- 鼻炎
- アトピーや乾燥肌などの皮膚疾患
手の陽明大腸経に所属する経穴(ツボ)
足の陽明胃経の経絡の流れ
胃経の経絡の解説
胃に属し、脾を絡う経絡です。胃と脾はどちらも消化に携わる密接な関係で、表裏関係でもあります。
目元から始まり、足の指まで縦に長い経絡です。

足先への刺激で、広い範囲に効果が期待できるよ!
胃経のツボは全部で45穴あります。
足の陽明胃経は顔から始まります。
胸部、腹部を通ります。
腹部を下り、股関節、大腿部に向かいます。
大腿部のやや外側を下ります。
下腿でも、脛の骨の外側を下ります。
足部では足の第2指の外側を、先端に向かいます。
胃経の経絡が通る部位
足の陽明胃経は、こんなところを通ります。
- 鼻
- 上の歯
- 口・唇
- 耳
- 髪の生え際・おでこ
- 気管
- 横隔膜
- 胃(幽門部)
- 脾
経絡と治療
- 消化器疾患(特に胃、食道)
- 慢性疲労
足の陽明胃経の経穴(ツボ)
足の太陰脾経の経絡の流れ
脾経の経絡の解説
脾に属し、胃を絡う経絡です。脾胃は表裏関係で、主に飲食物の消化を行います。
足の親指から始まり、すねの骨の内側を通ってお腹、胸まで上がる、全部で21穴の経絡です。

消化、吸収と、血液が漏れないようにする働きを持つ脾の経絡です!
足の太陰脾経は、足の第1指の内側から始まります。
下腿では、脛骨の内側の骨際を上にあがります。
大腿部でも内側をあがり、股関節に向かいます。
腹部、胸部をあがり、最後は脇にある「大包(だいほう)」に終わります。
脾経の経絡が通る部位
足の太陰脾経は、こんなところを通ります。
- 脾
- 胃
- 横隔膜
- 心
- 食道
- 舌根・舌下
経絡と治療
- 婦人科疾患
- 冷え性
- むくみ
- 貧血
足の太陰脾経に所属する経穴(ツボ)
手の少陰心経の経絡の流れ
心経の経絡の解説
心に属し、小腸を絡う経絡です。心は小腸と表裏関係にあります。
胸の中から始まり、上腕、前腕を通り小指に終わる、全部で9穴の経絡です。

臨床では、手先の疾患によく使います。心疾患や精神疾患には、後の心包経を使うイメージです。
手の少陰心経は脇の下の「極泉(きょくせん)」のツボから始まります。
上肢の内側(尺側)を下り、小指の先に終わります。
心経の経絡が通る部位
手の少陰心経は、こんなところを通ります。
- 心
- 心臓・動静脈
- 咽喉
- 目
- 横隔膜
- 小腸
経絡と治療
- 精神・意識障害
- 上肢の失調
- 循環器の問題
手の少陰心経に所属する経穴(ツボ)
手の太陽小腸経の経絡の流れ
小腸経の経絡の解説
小腸に属し、心を絡う経絡です。小腸と心は表裏関係にあります。
手の小指から始まり、前腕、上腕を通り、肩甲骨をめぐる、全部で19穴の経絡です。

四十肩・五十肩の人によく使う経絡です。
手の太陽小腸経は、手の小指から始まり、上肢を上がっていきます。
肩甲骨をめぐるように上がっていきます。
頚部、顔の側面を通り終わります。
小腸経の経絡が通る部位
手の太陽小腸経は、こんなところを通ります。
- 肩甲骨
- 心
- 咽喉
- 横隔膜
- 胃
- 小腸
- 鼻
- 耳
- 目
経絡と治療
- 肩こり
- 四十肩、五十肩
- 耳鳴り、難聴
手の太陽小腸経に所属する経穴(ツボ)
足の太陽膀胱経の経絡の流れ
膀胱経の経絡の解説
膀胱に属し、腎を絡う経絡です。膀胱と表裏関係にあるのは、次の腎経です。
目のあたりから始まり、頭を通って、背中を2回通り、足に伸びる。とても長い経絡です。

背面を縦長に伸びる経絡です。背腰部、下肢の不調から、泌尿生殖器、上部では顔や頭も関係のある経絡です。
膀胱経は全部で63穴の経絡です。
足の太陽膀胱経は目の内側から始まります。
後頭部を通り、下に向かいます。

膀胱経のツボ(経絡の順序は関係なく背部のみまとめたもの)
背部をくだりますが、背部の流注が特長的です。画像ではまとめて記載してありますが、内側(「大杼」の流れ)を通る経絡が一度大腿部まで伸び、その後外側(「附分」の流れ)を通ります。
膀胱経、大腿部のツボです。
背部をめぐり終わった経絡は、下腿に伸びてきます。
足部では外側を通り、小指に終わります。
膀胱経の経絡が通る部位
足の太陽膀胱経は、こんなところを通ります。長い経絡ですね。
- 目
- 頭頂部(百会)
- 脳
- 脊柱起立筋(背中)
- 腎
- 膀胱
経絡と治療
- 泌尿・生殖器の不調
- 婦人科疾患
- 腰痛・坐骨神経痛
足の太陽膀胱経に所属する経穴(ツボ)
足の少陰腎経の経絡の流れ
腎経の経絡の解説
腎に属し、膀胱を絡う経絡です。腎と膀胱が表裏関係にあるのは、泌尿器の仕組みからも納得できますね。
足の裏から始まり、鎖骨の下まで上ってくる経絡です。

腎は生命力の源。足元を冷やしちゃいけない理由の一つに、腎経の経絡の並びがあります。
腎経は全部で27穴の経絡です。
足の少陰腎経は、足裏に始まります。
足部、下腿の内側をあがっていきます。
腹部、胸部をあがり、鎖骨の下に終わります。
腎経の経絡が通る部位
足の少陰腎経は、こんなところを通ります。
- 脊柱
- 膀胱
- 腎
- 肝
- 横隔膜
- 肺
- 心
- 気管
- 舌根
経絡と治療
- 疲労回復
- 泌尿器・生殖器の不調
足の少陰腎経に所属する経穴(ツボ)
手の厥陰心包経の経絡の流れ
心包経の経絡の解説
心包に属し、三焦を絡う経絡です。心包と三焦は表裏関係にありますが、馴染みがない言葉ですよね。
胸から始まり、上肢を通り中指に終わる、全部で9穴の経絡です。

馴染みは無いけど、とても大切な心包と三焦です!目に見えないけど、確かに存在する、不思議な臓腑。
手の厥陰心包経は、胸部に始まり上肢をくだっていきます。
前腕の真ん中から、手の中指に向かって伸び、先端に終わります。
心包経の経絡が通る部位
手の厥陰心包経は、こんなところを通ります。
- 胸の内部
- 横隔膜
- 三焦
経絡と治療
- 自律神経の失調
- 精神障害
手の厥陰心包経に所属する経穴(ツボ)
手の少陽三焦経の経絡の流れ
三焦経の経絡の解説
三焦に属し、心包を絡う経絡です。三焦と心包は表裏関係です。
薬指から始まり、肩を通って、耳を巡り眉毛に終わる経絡です。

三焦経は上肢の失調、肩こりや耳の不調にも効果的です。
三焦経は全部で23穴の経絡です。
手の少陽三焦経は、手の薬指から始まります。
上腕部では、後面の真ん中を通り肩に伸びます。
耳の周りをめぐり、眉毛の端のあたりに終わります。
三焦経の経絡が通る部位
手の少陽三焦経は、こんなところを通ります。
- 心包
- 横隔膜
- 三焦
- 耳
- 目
経絡と治療
- 耳鳴り、難聴
- 肩の疾患
手の少陽三焦経に所属する経穴(ツボ)
足の少陽胆経の経絡の流れ
胆経の経絡の解説
胆に属し、肝を絡う経絡です。胆は肝と表裏関係にあります。
目元から始まり、耳の周りをグルグル巡り、体の横を通って足の薬指に終わります。

胆経も、顔から足先まで伸びる長い経絡で、特に体の側面を通ります。
胆経も長い経絡で、全部で44穴をつないでいます。
足の少陽胆経は、側頭部をめぐるように流れます。
体幹部においても、側面を通り大腿部に向かいます。
大腿部の外側を下ります。
下腿においても、外側、腓骨の際をくだります。
足部では、足の第4指に沿って伸び、先端に終わります。
胆経の経絡が通る部位
足の少陽胆経は、こんなところを通ります。
- 目
- 耳
- 胸の内部
- 横隔膜
- 肝
- 胆
- 鼠径部
経絡と治療
- 耳鳴り、難聴
- 坐骨神経痛
足の少陽胆経に所属する経穴(ツボ)
足の厥陰肝経の経絡の流れ
肝経の経絡の解説
肝に属し、胆を絡う経絡です。肝と胆は表裏関係にあります。

肝の経絡、ツボは滞りやすく、グリグリすると痛いところが多いんです!
肝経は全部で13穴の経絡です。
足の厥陰肝経は、足の第1指に始まり、脛骨に沿ってあがります。
大腿部、鼠蹊部をあがります。
腹部、胸部に終わります。
肝経の経絡が通る部位
足の厥陰肝経は、こんなところを通ります。
- 生殖器
- 胃
- 肝
- 胆
- 横隔膜
- 肺
- 気道・気管・喉頭
- 目(眼球、視神経)
- 百会
経絡と治療
- ストレス
- 貧血
- のぼせ
足の厥陰肝経に所属する経穴(ツボ)
おわりに
経絡の流れを理解した上で経穴(ツボ)を刺激すれば、期待以上の効果を得ることができます。
その昔、王様のような偉い人に鍼灸施術をする際、衣服を脱がせるなんてことはできず…。
手足のすぐに出せる箇所への施術だけで、全身の治療をしていたようです。
無茶言うなよ、と言いたいところですが、それを可能にした当時の鍼灸師さんのすごさを、改めて実感します。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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