この記事では、五臓の腎に蓄えられる精の不足である「腎精不足(じんせいぶそく)」を改善する経穴(ツボ)を紹介します。
五臓の腎には、生命力の源である精を貯蔵しておく「蔵精(ぞうせい)」の働きがあります。乳幼児期に腎の働きが低ければ、精を貯蔵しておけず発育・成長に問題が起こります。また、青年期以降に腎の働きが低下すれば、年齢相応以上の老化現象が現れます。こうしたことからも、五臓の腎を整えることがアンチエイジングになるとして注目されるようになってきました。
腎の働きは加齢によって低下してしまいます。他にも、過労、冷え、性交渉の過多などが腎の働きを低下させる要因となります。しっかりとケアをしつつ、腎の働きを整えるツボを刺激して、いつまでも元気でいられる体を目指しましょう。
腎精不足を改善するツボ
腎精不足を改善するためには、下記の2つのポイントをおさえる必要があります。
- 五臓の腎の働きを整え、しっかりと精を蓄える。
- 飲食物からの精の生成を助ける。
精はもともと持つ「先天の精」に、飲食物を消化吸収して「後天の精」を補う形で腎に貯蔵されます。腎の働きを整えるだけでなく、消化や吸収をつかさどる脾胃の働きも整えるツボを紹介していきます。
太渓(たいけい)
太渓は腎に属するツボです。腎の働きを整え、精を蓄える蔵精の働きをサポートします。
太渓は腎に属するツボの中でも、腎の働きがよく現れ、そして腎の働きを改善する効果の高いツボです。そのため、腎精不足による症状には、まず太渓を刺激してみることをオススメします。また、刺激をしやすい部位にあるのでセルフケアにも用いやすい特徴があります。
- 足の冷えや疲れが強い人。
- 不眠など睡眠障害がある人。
- 腎精不足の症状に広く効果的。
復溜(ふくりゅう)
復溜も腎に属するツボです。復溜はそのツボの特性から、腎精を補い、貯蔵する働きを高めるのに適したツボだと考えられています。
復溜の特性を大まかに解説します。復溜は腎の経絡の「経金穴」という性質を持ちます。「金」は腎に該当する「水」を生み出す母です。腎の働きが低下し、腎精不足のような「虚」の症状が起こっている時は、その母にあたる「金」を補う方法があります。そのため、腎精不足には、復溜が効果的だと考えられます。
- 腎精不足の症状に広く効果的。
- 加齢、過労による腎の虚には復溜。
中府(ちゅうふ)
中府は肺に属するツボです。復溜の項で解説した通り、腎の虚性の症状である腎精不足を改善するためには、腎(水)の母である金を補うことが重要です。五臓の関係で見た時、腎の母にあたるのは肺です。
しっかりと深く呼吸をすると、呼吸によって得られる気は腎に届き、腎を養います。中府のツボを刺激することで、肺の働きを高めることができます。また、骨格的にも、胸の前側にある中府のツボを刺激すると、胸を大きく開いて呼吸をすることができます。
- 呼吸が浅い人。
- 喘息の持病がある人。
- 皮膚が弱い人。
関元(かんげん)
腎の状態は下腹部に現れます。武道やスポーツなどで重視される「丹田」は、五臓の腎との関係があり、関元は下腹部の丹田のあたりにあるツボです。
腎にためられた精は、関元のある下腹部のあたりから気に変えられ、全身を巡ります。
また、下腹部は内部に泌尿器・生殖器があります。関元を刺激することで、腎の働きの低下による泌尿器・生殖器の不調を改善することができます。具体的には、高齢者の尿漏れや失禁から、若い人でも月経に関わる不調や男性のインポテンツ(ED)などがあります。
- 下腹部に力がなくヘコヘコしている人。
- 泌尿器・生殖器疾患の症状が強い人。
足三里(あしさんり)
足三里は胃に属するツボです。足三里のツボは特に、飲食物の消化や吸収に問題がある人にオススメのツボです。しっかりと食事を摂り、消化・吸収することで、私たちの体は後天の精を蓄えていきます。腎の働きが正常でも、こうした消化・吸収の働きがうまくいっていなければ、精を貯蔵することはできません。
食事のバランスも当然重要ですが、それを受け入れる胃の働きを整える必要があります。足三里を刺激して、胃の消化・吸収をサポートしましょう。
- 食欲不振、消化不良などがある人。
- 食が細い人。
- 胃腸が弱い人。
三陰交(さんいんこう)
三陰交は脾に属するツボです。五臓の脾には、胃腸における消化・吸収を統括する働きがあります。飲食物の消化・吸収を助け、そこから後天の精を抜き取り、腎に貯蔵します。
三陰交は肝・腎・脾の3つの経絡が交わるツボであり、三陰交への刺激はそれぞれの経絡を通じて、3つの臓腑を整える効果があります。また、三陰交には下半身の冷えを改善する効果もあります。胃腸が弱く、下半身の冷えがある人は特に、三陰交のツボを刺激して、腎精の貯蔵をサポートしましょう。
- 胃腸が弱い人。
- 食が細い人。
- 下半身の冷えが強い人。
- すぐに下痢をしてしまう人。
おわりに
鍼灸指圧治療院あたしんち
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