陰陽の虚実と治療のための経穴(ツボ)【東洋医学でみる症状と養生】

陰陽イラスト 東洋医学
東洋医学において、自然界に存在するものや私たちの体を構成するものなど、全て陰陽があると考えます。自然界(外界)の陰陽のバランスにあわせた人体(体内)の陰陽のバランスになるよう、鍼灸治療や養生があります。冷たい・静か・内に向かう陰の力と、温かい・活発な・外に向かう陽の力のどちらが良いということはなく、その時に合わせたバランスをとることが大切です。

 

今回は東洋医学や鍼灸の世界には欠かせない、「陰陽(いんよう)」の概念と、体の中の陰陽についてまとめていきます。

陰陽師(おんみょうじ)といえば、映画やゲームの題材になったことからも知っている人が多いはずです。陰陽五行論を用いて、人や世の中の移ろいを占うようなことをしていた陰陽師に、鍼灸師はとても近い存在です。私たち鍼灸師も、陰陽五行論を土台に人を診て、治療することを生業としています。

「陰陽」は外・内関わらず存在するエネルギーの盛衰を表します。「陰」にも「陽」にも働きがあり、そのバランスをもって私たちの生活が成り立ちます。

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森羅万象における陰と陽

陰陽イメージ

この世にある全てのものは、陰と陽にわけて考えることができます。

陰に属するもの

「暗い」、「冷たい」、「静か」、「夜」、「地」などがあります。人間を陰陽でわけると、女性が陰に属します。

陽に属するもの

「明るい」、「熱い」、「活動的」、「昼」、「天」などが陽に属します。人間では、男性が陽に属します。

陰の中にも陽があり、陽の中にも陰がある

陰は女性、陽は男性といっても、それぞれ人間の体をみれば、上半身を陽、下半身を陰と考えます。細かくみていくと一つの事象の中でも、陰陽がわかれてあります。

季節でみても、夏至を陽の最も強い時期、冬至を陰の最も強い時期とし、四季で陰陽が移り変わります。1日の中でも、お昼の陽が高い時間が陽、夜中を陰として捉えます。

僕たちの体も、そうした移り変わりに合わせて、陰陽のバランスをとって、体を外の環境に適応させようとします。

 

私たちの体と陰陽

僕たちの体の中に起こっている陰陽を確認してみます。

陰と陽の性質

陰は、内側、下への方向に働きます。他に、冷やす、落ち着かせる働きもあります。体を休ませたり、睡眠に入るのも体の陰の働きによります。

陽は、外側、上への方向に働き、温め、活発にする働きがあります。活動的に生活をし、体を温める力が強いのが陽の特徴です。

 五臓六腑と陰陽

東洋医学の世界では、五臓(肝・心・脾・肺・腎)は陰に属します。五臓には、それぞれの働きの他に、「ため込む」「内にしまい込む」働きがあります。こうした「内へ向かうエネルギー」は陰の特性です。

一方、六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・(三焦))が陽に属します。六腑は飲食物を通す一本の管であり、「外に流す」「外に排出する」など、「外へ向かうエネルギー」を持つため、陽に属すると考えられます。

生活サイクルと陰陽

日の出から日没までの自然界の陰陽の移ろいに合わせて、私たちの体の陰陽も変化します。また陰陽は加齢などによって移ろっていきます。

  • 起床から就寝までのサイクルと陰陽
  1. 起床時から、自然界に合わせて徐々に陽が高まる。
  2. 日が昇るにつれ活動的になり、ピークを迎える。
  3. 昼過ぎから夜に向けて、陽がおさまり陰が高まる。
  4. 夜になると、陽が弱まり、陰がピークを迎え眠くなる。

一例としてあげましたが、太陽の動きに合わせて私たちの体も陽が高まり、太陽が沈むと陰が高まります。

  • 女性の「更年期障害」という症状
  1. 年齢を重ね、生命力の源である腎が弱る。
  2. 体内の陰陽のバランスが崩れ、陰が弱まり、陽が盛んになる。
  3. ホットフラッシュ、多汗、頭痛など上部・熱(陽)の症状が出る。

更年期障害は体内のみで起こる陰陽の盛衰の代表例です。年齢を重ねることで、体を沈める働きである陰が減少していきます。結果、体の陽のエネルギーが高い状態が続き、更年期障害に特徴的な熱性の症状が現れます。

しゅん
しゅん

鍼灸治療では、季節、年齢や性別、生活サイクルから、こうした陰陽のバランスも考慮した治療を行います。

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【陰陽の虚・実】陰陽バランスの乱れによって起こる症状

それでは、体の陰陽のバランスが崩れるとどうなるかをみていきましょう。

陰虚(陰の不足)

「陰虚(いんきょ)」とは、体内の陰が不足し、陽が相対的に強まっている状態です。東洋医学では体液全般(血・水)を陰液(いんえき)と呼びます。そのため、血の不足である「血虚(けっきょ)」や水分の不足が進行して、陰虚につながることもあります。

陰虚において現れる症状としては、下記の項目が代表的です。

  • 熱っぽさ・ほてり(五心煩熱)
  • 不眠、盗汗(寝汗)
  • 食べても太らない、痩せ
  • 乾燥
  • 顔や舌が赤くなる

陽を抑え込む力が不足するため、熱・上昇・活動を抑えられなくなります。

陽虚(陽の不足)

「陽虚(ようきょ)」とは体内の陽が不足し、陰が相対的に強まっている状態です。陽虚の場合、気の働きの一つで体を温める温煦(おんく)の低下に、冷えがあわさります。

出てくる症状は、

  • 寒さを感じる、冷え性
  • 横になってじっとしたくなる
  • 顔色が青白い
  • 水太り体質
  • 下痢

熱・活動の力が不足しているため、冷えて、活動性が低下します。

陰実(陰の過剰)

「陰実(いんじつ)」とは、陽の過不足はないものの、陰が強まっている状態です。

  • 寒気
  • 手足の冷え
  • 顔色が白っぽく
  • 痰や鼻水、尿の色が薄くなる

体を冷やし、体の組織も沈静化されてしまいます。

陽実(陽の過剰)

「陽実(ようじつ)」は陰の過不足はないものの、陽が強まっている状態です。

  • 熱、ほてり
  • 口や喉の渇き
  • 話し方や呼吸が荒々しい

陽が強いため、内から外へ爆発的な広がりを見せる症状がでます。

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陰陽バランスを治療する経穴(ツボ)や食事例

陰陽のバランスは、体内の陰液と陽気のバランスによって決まります。特に臨床で多い、陰虚と陽虚の治療をご紹介します。

陰虚の治療

陰虚の場合、陰液を補い、不足してしまっている陰を高める治療が必要です。陰液は、血や水など、体内の栄養のある全ての水分です。そのため、津液や血を補うような治療と同じ治療を行います。

特に多いのが、加齢による陰虚です。これは、生命力の源である腎の働きが弱るためで、「腎陰虚」と言われます。先述した女性の更年期障害の多くは、腎陰虚によるものです。

陰虚の鍼灸治療:滋陰

「滋陰(じいん)」には、五臓の腎に属するツボを使うことが多いです。

陰虚の場合、陰の下におろす力が弱り、陽の上昇の力が強まっているので、足にあるツボを刺激して、上昇している気血をおろしてあげましょう。

  • 太渓(たいけい)

足首の、内くるぶしとアキレス腱の間にあるツボです。細かく確認すると、脈が拍動(後脛骨動脈)しているのがわかると思います。

▶︎太渓の詳しい位置や治療効果はこちらの記事へ

 

  • 復溜(ふくりゅう)

復溜イメージ

復溜は太渓から指3本分くらい上にあります。五臓の腎に属するツボで、「溜まる」という字からも、腎を回復させる働きが期待できます。

▶︎復溜の詳しい位置や治療効果はこちらの記事へ

 

陰虚に良い食事

  • 貝類

貝類は水分に富み、栄養価も高く、滋養・滋陰にオススメの食材です。

しゅん
しゅん

亜鉛が豊富な食材がオススメ。

また、貝類は鹹味に分類されるので、腎を養います。陰陽の源である腎の陰を補うことで、陰虚の治療ができます。

  • れんこん

れんこんには滋養強壮の働きがある他、粘膜を保護する働きがあり胃腸の働きをサポートします。また、炎症を抑える働きがあるため、高まった陽を抑える効能も期待できます。

陽虚の治療

陽虚は気虚が進行して、体を温める働きが低下してしまった状態で、冷えの症状がでます。そのため、まずは気虚の治療が必要です。

その上で、陽を高める治療を行います。

陽虚の鍼灸治療:補陽

  • 大椎(だいつい)

首を前に倒した時に、一番出てくる背骨(第7頚椎)の下にあるツボです。陽に関わる経絡が交わるツボなので、冷えにも有効なツボです。

▶︎大椎の詳しい位置や治療効果はこちらへ

 

陽虚に良い食事

  • えび

えびにはタウリンやたんぱく質が豊富に含まれ、疲労回復にぴったりの食材です。気虚から陽虚へと進行している場合、エビなどの気虚にも効果のある食材がオススメです。

  • シナモン

シナモンには強く体を温める作用があります。生薬としても、「桂皮(けいひ)」として、熱性・辛味で体に熱を加え、活動的にする働きがあります。

 

おわりに

東洋医学や鍼灸治療ではよく用いる「陰陽」ですが、一般的には知らない人の方が多い印象です。陰陽は自然界や私たちの体内で、移ろい、バランスをとりあっているものです。陰・陽どちらにもいきすぎず、過不足なく「中庸(ちゅうよう)」でいることが重要な点も、東洋医学ならではの考え方です。

まずは自然界、太陽の動きに合わせて寝起きをしたり、季節にあわせた食事をいただくことから、体内の陰陽のバランスも整えていきましょう。

 

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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