【滎兪外経治】滎穴・兪穴の特徴と東洋医学の「痛み治療」の紹介

痛みイメージ 選穴・配穴

タイトルからして、鍼灸師以外には伝わらないような小難しい言葉が並んでいます。今回は、【東洋医学における「痛み治療」】について、滎穴(えいけつ)と兪穴(ゆけつ)のツボを使った考え方をご紹介します。

何だかまだわかりにくいので、さらに噛み砕いてみると、

  • 肩が痛い、頭が痛い、などの痛み治療において
  • 東洋医学では、痛みが出る部位を通る経絡の「滎穴」と「兪穴」を用いる
  • では、各経絡の滎穴・兪穴は?

それを、まとめていきます。

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【滎兪外経治】痛み治療の基礎の確認

「滎兪外経治(えいゆがいけいち)」とは鍼灸治療の古典(『霊枢』)に記載があり、鍼灸治療の土台となる考え方です。簡単に言えば「滎穴と兪穴には、所属する経絡上の障害(痛みなど)を治療する力がある」ということになります。

古典的な鍼灸治療というと、体質の改善であったり、難病の治療であったり、症状の根本的な改善を目的とするものが一般的なイメージです。しかし当然、身近な肩の痛み(五十肩など)や、腰の痛みなどへの治療も行っていました。その中で特徴的なのが、患部への刺激だけではなく、遠隔刺激(滎穴・兪穴)を用いて治療することがあったという点です。

滎穴・兪穴というツボの特性について

滎穴(えいけつ)、兪穴(ゆけつ)はどちらもツボの二つ名のようなものです。ツボにはそれぞれ名前があり、その他に経絡を通したツボの働きを表す呼び名があります。こうした呼び名を持つツボを「要穴(ようけつ)」と言います。

説明下手でとてもわかりにくい上、ここを理解してほしいわけではないので、詳しく知りたい人は下記のリンクをご参照ください。

滎穴・兪穴どちらも、五(六)臓六腑の各経絡に1つずつ存在します。滎穴に該当するツボには、「身熱を冷ます」働きがあります。兪穴に該当するツボには、「体の重だるさや関節の痛みを治療する」働きがあります。

2つのツボの働きをあわせると、「その経絡に起こる熱(炎症)を抑え、重だるさ・痛みを治療する」となります。これが、「滎兪外経治」の元となる考えです。

では、次項よりそれぞれの滎穴・兪穴を確認していきましょう。

各経絡の滎穴・兪穴一覧

それぞれの経絡の滎穴と兪穴の一覧表です。滎穴と兪穴、五(六)臓六腑の12ずつあります。

【臓】 滎火穴 兪土穴 【腑】 滎水穴 兪木穴
行間(こうかん) 太衝(たいしょう) 侠渓(きょうけい) 足臨泣(あしりんきゅう)
少府(しょうふ) 神門(しんもん) 小腸 前谷(ぜんこく) 後渓(こうけい)
大都(だいと) 太白(たいはく) 内庭(ないてい) 陥谷(かんこく)
魚際(ぎょさい) 太淵(たいえん) 大腸 二間(じかん) 三間(さんかん)
然谷(ねんこく) 太渓(たいけい) 膀胱 足通谷(あしつうこく) 束骨(そっこつ)
心包 労宮(ろうきゅう) 大陵(だいりょう) 三焦 液門(えきもん) 中渚(ちゅうしょ)
リンクのあるものは、ツボについての詳細ページを別記事にまとめてあります。

各経絡の滎穴・兪穴の位置の詳細

滎穴・兪穴の位置を詳しくご紹介します。どうしてもツボの位置の羅列になってしまうので、セルフケアに参考にしていただく場合は、

  1. 次項の「経絡の流れの確認」で、不調の位置を特定
  2. 本項にて滎穴と兪穴の確認

といった流れでみていただくと、少し理解しやすくなります。

  • 肝経の滎穴・兪穴

行間:足背、第1・第2指間、みずかきの近位、赤白肉際。

太衝:足背、第1・第2中足骨間、中足骨底接合部遠位の陥凹部、足背動脈拍動部。

  • 心経の滎穴・兪穴

少府:手掌、第5中手指節関節の近位端と同じ高さ、第4・第5中手骨の間。

神門:手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上。

  • 脾経の滎穴・兪穴

大都:足の第1指、第1中足指節関節の遠位内側陥凹部、赤白肉際。

太白:足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際。

  • 肺経の滎穴・兪穴

魚際:手掌、第1中手骨中点の橈側、赤白肉際。

太淵:手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部。

  • 腎経の滎穴・兪穴

然谷:足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際。

太渓:足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部。

  • 心包経の滎穴・兪穴

労宮:手掌、第2・第3中手骨間、中手指節関節の近位陥凹部。

大陵:手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上。

  • 胆経の滎穴・兪穴

侠渓:足背、第4・第5指間、みずかきの近位、赤白肉際。

足臨泣:足背、第4・第5中足骨底接合部の遠位、第5指の長指伸筋腱外側の陥凹部。

  • 小腸経の滎穴・兪穴

前谷:小指、第5中手指節関節尺側の遠位陥凹部、赤白肉際。

後渓:手背、第5中手指節関節尺側の近位陥凹部、赤白肉際。

  • 胃経の滎穴・兪穴

内庭:足背、第2・第3足指間、みずかきの近位、赤白肉際。

陥谷:足背、第2・第3中足骨間、第2中足指節関節の近位陥凹部。

  • 大腸経の滎穴・兪穴

二間:示指、第2中手指節関節橈側の遠位陥凹部、赤白肉際。

三間:手背、第2中手指節関節橈側の近位陥凹部。

  • 膀胱経の滎穴・兪穴

足通谷:足の第5指、第5中足指節関節の遠位外側陥凹部、赤白肉際。

束骨:足外側、第5中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際。

  • 三焦経の滎穴・兪穴

液門:手背、薬指と小指の間、みずかきの近位陥凹部、赤白肉際。

中渚:手背、第4・第5中手骨間、第4中手指節関節近位の陥凹部。

ツボの位置は新版経絡経穴概論より引用しています。

経絡の流れの確認

各経絡の滎穴・兪穴を確認したところで、各経絡がどの辺りを通っているかをみていきましょう。それぞれの経絡を簡単にまとめると、下記の通りになります。

  • 肝経:足の親指、下肢、胸腹部に伸びる。
  • 心経:脇の下、上腕、前腕を通り小指に伸びる。
  • 脾経:足の親指、すねの骨の内側、お腹、胸に伸びる。
  • 肺経:胸の前から上腕、前腕を通り、親指に伸びる。
  • 腎経:足の裏から下肢、腹部前面、鎖骨の下に伸びる。
  • 心包経:胸、上腕、前腕、中指に伸びる。
  • 胆経:目元、耳の周りを巡り、体幹部側面、下肢側面、足の小指に伸びる。
  • 小腸経:手の小指、前腕、上腕を通り、肩甲骨、耳に伸びる。
  • 胃経:目元から始まり、顎、首、体幹部前面、下肢前面、足の指に伸びる。
  • 大腸経:手の示指から前腕、上腕、肩を通り、鼻の横に伸びる。
  • 膀胱経:目、頭、首の後ろ、背中、下肢後面に伸びる。
  • 三焦経:薬指、前腕、上腕、肩を通って、耳を巡り、目に伸びる。

経絡の流れについては、下記のリンクに詳細がまとめてあります。

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滎兪外経治の臨床使用例

ここからは、どのような痛みに、どのようなツボを選ぶかを、臨床例を用いてご紹介します。

肩を動かした時の肩甲骨や肩の痛み

四十肩や五十肩の際に起こる肩の痛みなどで、特に肩甲骨のあたりが痛む場合を考えましょう。肩甲骨を通る経絡は、手の太陽小腸経です。そのため、小腸経の滎穴である「前谷」と兪穴である「後渓」を刺激することで治療を行います。

肩の前側が痛み場合は、手の陽明大腸経の滎穴「二間」や兪穴「三間」が有効です。

痛む場所ごとに、そこを通る経絡を確認し、その経絡の滎穴・兪穴を刺激しましょう。

鍼灸治療では特に、滎穴と兪穴に鍼を刺したまま、痛みの出る動きをしてもらう「運動鍼(うんどうしん)」という方法を用います。セルフケアでは、鍼を打たなくても、ツボのあたりを押さえながら動かしてみてください。

こめかみ(側頭部)の頭痛

側頭部・こめかみの痛みの場合、足の少陽胆経の滎穴「侠渓」や兪穴「足臨泣」を刺激します。

他にも、手の少陽三焦経も耳の周りを巡り、側頭部にかかります。三焦経の滎穴である「液門」や、兪穴の「中渚」も治療に有効です。

 

おわりに

今回は滎穴と兪穴というツボの特性から、東洋医学における「痛み治療」についてまとめてみました。

経絡に所属するツボは361あり、その中でも各経絡において重要な役割を持つツボを「要穴」と言います。しかし、要穴だからいつでも使えるのか、万能なのかというとそうでもありません。滎穴と兪穴は特に「痛み治療」に用いることが多いツボですが、他のツボでも効果がある場合もあります。また、他の治療に滎穴や兪穴を用いることもあります。

全てのツボに、なんらかの意味があるのではないかと信じてやまない私には、要穴か否かはあまり関係ありません。その人の、その症状に適したツボを探す中の、一つの選択肢として「滎兪外経治」の考えをご紹介してみました。

ややこしかったですね。

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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