今回は、【大陵(だいりょう)】というツボについて、場所や、刺激することで期待できる効果などをまとめていきます。
大陵は手首の掌側にあり、手根管症候群や手首の腱鞘炎などに局所的に効果を発揮するツボです。特に手根管症候群の診断時には、大陵付近を叩打することで手先にしびれが起こるかを確認します。
また、腱鞘炎などの手首、手先の不調・可動域の問題には、大陵のツボが効果的です。セルフケアにも取り入れやすい位置にあるツボなので、試してみてください。
目次
大陵(だいりょう)の位置と所属経絡
大陵というツボの位置や、所属する経絡について確認していきます。
大陵の位置
手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上。
大陵は手首の掌側のシワの、ちょうど真ん中のあたりにあるツボです。指を握り込んでグーを作った時に、浮き出る腱(長掌筋腱と橈側手根屈筋腱)の間にあります。
大陵の所属経絡と特徴
大陵は手の厥陰心包経に所属するツボです。
心包は五臓の心(心臓)を守るように覆う、しかし実在はしない臓器だとみなされています。心包の働きは、主に心と同じで、心臓のポンプとしての役割、精神活動の取りまとめがあります。
心の働きに関して詳しくは下記のページをご覧ください。
- 心包経の原穴(げんけつ)
大陵は心包の経絡の原穴(兪土穴)に該当します。五臓の治療にはよくこの原穴に背中の兪穴(厥陰兪)をあわせて用いるため、大陵というツボが重要になります。こうしたツボの組み合わせを「兪原配穴(ゆげんはいけつ)」と言います。
大陵のツボの治療効果まとめ
大陵を刺激することで期待できる効果についてご紹介します。大陵は手首の内側にあるので、押圧も温灸もやりやすいツボです。
手首・手の不調に
大陵は手根管症候群の特効穴です。手根管症候群ほどの症状でなくとも、手や指の使いすぎによる腱鞘炎やバネ指(特に示指〜薬指)にも効果的です。
大陵のツボを刺激することで、手首にある腱や腱鞘などの構造に刺激を与えることができます。特に痛みが出ている部位への、局所的な効果を期待できるツボです。
ストレス性の胃腸症状に
大陵は心包経に所属するツボですが、胃腸の調子を整える効果もあると考えられています。
私もあまり信用していませんでしたが、ストレス性の胃痛や下痢・便秘など、大陵のツボを組み合わせると改善が見られるケースがありました。
メンタル面の変化から訪れる胃腸の不調には効果的なのかもしれません。
精神疾患に
所属する心包の働きを整えることで、精神疾患にも効果を発揮します。特に大陵は心包の原穴であることからも、心包の不調を確認する診断点でもあり、治療点でもあります。
大陵とあわせて刺激したいツボ
大陵とあわせて刺激をすることで、より治療効果を高めることができるツボをご紹介します。
膏肓(こうこう)
上背部、第4胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸。
膏肓は背中にあるツボです。肩甲骨の内側にあり、筋肉としては、表層から僧帽筋・大菱形筋・脊柱起立筋の一部(腸肋筋)が重なる部位にあります。
バネ指の特効穴
膏肓はバネ指の治療に常用する特効穴です。鍼灸師なら、誰しもが知っていると言っても過言ではありません。
他にも、四十肩・五十肩や手首の腱鞘炎など、上肢の失調のほとんどに効果を発揮します。
最近テレビでも、「肩甲骨から動かす」ことの大切さを取り上げるようになりましたね。膏肓は脊柱(背骨)と肩甲骨をつなぐ筋肉にあるツボです。膏肓を刺激することで、肩甲骨の動きが改善します。
おわりに
今回は大陵というツボについてまとめてみました。手首にあるツボで、手根管症候群や腱鞘炎などの特効穴です。私の妻も、育児中の抱っこ期間に手首の痛みを訴えていました。大陵のツボは実際に痛みが起こる場所の付近にあるため、マッサージなどで痛みを強く感じる場合もあります。少し優しめの圧からマッサージをしてみてください。
他にも、自律神経失調に効果的な「内関(ないかん)」と同じ心包経に所属するため、精神疾患やストレスからくる胃腸の不調に効果的です。家事や育児、仕事などで手先を使うことの多い人は、セルフケアにも用いやすいツボなので試してみてください。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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