今回は、【中府(ちゅうふ)】というツボについて、場所や、刺激することで期待できる効果などをまとめていきます。
中府は肺に属する重要なツボで、呼吸器の不調に効果があります。また運動器(筋肉)的に見ても、腕の動きや姿勢に関わる重要なツボです。
「空気をしっかり吸い込まない」ような息苦しさがある場合、特に中府のツボを刺激してみてください。
目次
中府(ちゅうふ)の位置や所属経絡
中府というツボの位置や、所属する経絡について確認していきます。
中府の位置
前胸部、第1肋間と同じ高さ、鎖骨下窩の外側、前正中線の外方6寸。
中府は左右の胸にあるツボです。鎖骨の真下よりも少し下、胸の筋肉(大胸筋)の上にとります。
中府の所属経絡と特徴
中府は手の太陰肺経に所属するツボです。肺経は中府のツボから始まり、手の親指に伸びる経絡です。
東洋医学では、鼻から気管・気管支、肺まで、呼吸器に関わる全てを「肺」と捉えて考えます。
- 肺の募穴
中府は肺の経絡の中でも、「募穴(ぼけつ)」という特徴を持ちます。肺の経絡は胸の奥(中焦)から起こり、中府のツボに気が集まり始まります。
中府のツボの治療効果まとめ
中府を刺激することで期待できる効果をご紹介します。中府は胸にあるので、自宅なら温灸もできなくはありません。押圧での刺激もしやすいツボです。
呼吸器疾患に
中府はその位置からも、呼吸器疾患の特効穴の一つです。
治療をしていく中で中府の有用さを感じるのは、風邪や喘息、花粉症などが慢性化した頃です。咳や鼻水、くしゃみなどの呼吸器疾患が長引くと、背中が丸くなり、胸が縮こまります(次項で説明する「巻き肩」)。
すると、呼吸時にもうまく空気を吸い込むことができなくなり、息苦しさや疲れやすさを感じてしまいます。中府を刺激して、深く呼吸ができるよう胸を緩めましょう。
巻き肩(姿勢)改善に
肩が前に巻いて、背中が丸く見える状態を「巻き肩」の姿勢とよく言います。肩こりや背中・腰の痛み、スタイルの問題で言えばぽっこりお腹なども、巻き肩が原因の一つとなり起こります。
中府のツボがある大胸筋の働きは、腕の屈曲・内転・回内です。デスクワークでキーボードに手を乗せた状態や、調理中に食材を切る時など、何かと大胸筋を収縮させた作業が多いはずです。
胸の筋肉が縮んだままかたまると、背中は丸くなり、姿勢が悪く見えてしまいます。中府のツボを刺激して、巻き肩を解消しましょう。
姿勢と呼吸
想像してみてください。
田舎に行き、空気が澄んだところで、深呼吸をするとき…手を広げて、胸をいっぱいに開いて深呼吸しますよね。
姿勢と呼吸には、密接な関係があります。背中が丸まり、肩が巻き込むように前に出ている状態では、満足に空気を吸い込むことができません。
- 肺は胸郭内にある
体幹部において、背骨・肋骨・胸骨が関節することで、「胸郭(きょうかく)」が構成されます。この胸郭の中に、肺が納まっています。
背中が丸まり、胸が縮んでいる状態では、胸郭はすぼまっています。必然、中に納まる肺もすぼまっているため、呼吸にあわせて満足に膨らむことができません。
中府だけではありませんが、胸や鎖骨の下にあるツボを刺激し、胸郭の動きが出ると深い呼吸がしやすくなります。中府は特に、こうした筋肉・骨格的にも、経絡を通しても、呼吸に関わる重要なツボです。
中府とあわせて刺激したいツボ
中府とあわせて刺激をすることで、より治療効果を高めることができるツボをご紹介します。
尺沢(しゃくたく)
肘前部、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部。
尺沢は肘の関節部分のシワにあるツボです。力こぶを作った時に、出てくる腱(上腕二頭筋腱)のうち、外側の腱のさらに外側にあります。
- 肺経の合穴
尺沢も中府と同様に、肺経に所属するツボです。中府が「気が集まるところ(募穴)」であるのと同じように、尺沢は「気が入るところ(合穴)」としての特徴を持ち、肺経の中でも重要なツボの一つです。
- 慢性化した呼吸器疾患に
尺沢も長引く呼吸器疾患に有用なツボです。
例えば風邪をひいた場合、発熱や関節の痛みがある時は「表」の症状と言い、体の表面に近い部分で戦っている状態と考えます。一方、発熱や関節痛が落ち着き、咳や痰などが強くなると「裏」の症状と言い、体の中で戦っている状態です。
中府や尺沢は、このうちの「裏」の状態で特に効果を発揮するツボです(もちろん「表」でも有用ですが)。
おわりに
今回は肺経の始まりのツボである、中府についてまとめてみました。中府は呼吸器全般だけでなく、運動器(筋肉)を通しても呼吸に関わる大切なツボです。
背中を丸めて深呼吸するのって、難しいですよね。背筋を伸ばして、胸を開いて、肺にたくさん空気を送り込むようにするのが、深呼吸です。中府のツボを刺激して、良い呼吸を目指してみてください。
鍼灸指圧治療院あたしんち
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