便秘に関する東洋医学的な考えと便秘の種類に合わせた養生や対策まとめ

便秘 東洋医学
東洋医学において、便通は大腸の働きだけでは決まりません。脾胃の消化吸収が低下して起こる便秘、肝の疏泄が低下し気の巡りが悪くなって起こる便秘、腎の働きの低下による便秘など、原因は多岐に渡ります。根本から便秘を治療する際には、こうした五臓六腑の働きを整え、気血水の巡り・体内の寒熱を改善する必要があります。五臓六腑の調子を整え、便秘改善に効果的な経穴(ツボ)である「天枢」、「太衝」、「足三里」、「太渓」をご紹介します。またそれにあわせて、自分の体質を見極めた便秘対策を考えていきましょう。

 

今回は便秘について、東洋医学的な考えをまとめていきます。

皆さん、便通は毎日ありますか?

腸内環境と、体の様々な機能の関係が明らかになってきていますね。便秘がちでは、腸内環境は悪くなってしまいます。ヨーグルトなどの発酵食品も良いですが、まずは自分の便秘の原因を明らかにして、対策を練りましょう。

東洋医学では、便に関わる臓腑と働きを、

  • 大腸:糟粕の伝化
  • 肝:疏泄作用
  • 脾:運化作用
  • 胃:通降作用
  • 腎:肛門に開く

上記のように考え、これら臓腑の働きの低下、それによる気血や寒熱の乱れによって便秘につながります。

  • 熱秘:乾燥して固い便
  • 気秘:残便感の残る便
  • 虚秘:排便に時間がかかり、疲れる
  • 冷秘:腹部の冷痛を伴う

五臓六腑の働きの乱れによって起こる便秘を、大きく4種類にわけて考えます。自分の便秘の種類を特定し、原因にあわせた対策をとることが重要です。

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【便秘の定義】何日便通がないと便秘なの?

「便秘」に関する定義は、学会や先生の考えで異なります。代表的なものをピックアップしてみました。

  • 日本内科学会の定義
    • 3日以上、便通がない状態
    • 毎日排便があっても、残便感がある状態
  • 日本消化器病学会の定義
    • 排便が数日に1回程度に減少
    • 排便間隔が不規則で、便の水分含有量が低下している状態
  • 日本緩和医療学会の定義
    • 腸管内容物の通過が遅延・停滞し、排便に困難を伴う状態

どの学会も総合的に見て、「数日間、便通がなく」「出ても残便感のあるもの」を、便秘と捉えていることがわかります。

五臓六腑・気血の働きと便秘の関係

東洋医学では、便秘という一つの症状に対して、いくつかの原因を考えます。それぞれ排便時の様子や、便の質によって原因を特定できます。

便秘でお悩みの人は自分の便秘のタイプを確認して、自分に合った便秘解消法を取り入れましょう。

五臓六腑の働きと便秘

東洋医学では、下記の臓腑が便秘に関わると考えています。

  • 大腸:「糟粕の伝化」という働きにより、便を形成、排泄する。
  • 肝:「疏泄作用」により便をスムーズに排泄する。
  • 脾:「運化作用」により飲食物を排泄しやすい形で大腸に送る。
  • 胃:「通降作用」により飲食物を腸に送る。
  • 腎:「肛門に開く」特徴を持つため、肛門の働きをコントロールする。

それぞれ細かくみていきます。

大腸は便の形成と水分再吸収

言わずもがなですが、東洋医学でも大腸の働きが低下すると便秘につながります。飲食物から便を作る大腸の働きを、東洋医学では「糟粕の伝化」と言います。消化された飲食物(糟粕)から水分を吸収し、糞便に変える、という意味合いです。

胃は消化、脾は消化・吸収・排泄まで全てを管轄

脾胃は消化・吸収に関わる臓腑です。

  • 脾:運化
    • 飲食物の消化・吸収・運搬などを管轄する。
  • 胃:通降
    • 消化した物を下(腸)に降ろす。

東洋医学的な定義でいうと、上記のような形で排便と関わります。

肝は気の巡りを良くし便通をサポートする

肝には「疎泄(そせつ)」という、全身の気の巡りに関わる働きがあります。消化や排便に関わる臓腑も、気の働きで動きます。

疎泄の働きが低下し、気の巡りが滞ると、臓腑の働きも低下し便秘の原因になります。

腎は二陰に開く

東洋医学では「腎は耳と二陰(肛門、尿道)に開竅する」と言います。

そのため、腎の働きの低下が便の問題につながることもあります。しかし、腎の不調による影響は、便秘より下痢の方が多い印象です。

気血の働きと便秘

気血の性質そのものも、便の形成や排便に関係します。

  • 気:気の働きの低下・不足による便秘。
  • 血:栄養・潤す作用の不足による便秘。

気が不足する「気虚(ききょ)」や、滞る「気滞(きたい)」の状態では、便を押し出す力(推動作用)が弱まり、便秘になります。

血の不足である血虚も、便の水分が少なくなり、硬くなることで便秘につながります。

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便の性質や排便時の様子から、便秘の種類を考える

便の質や形状、排便後の体の様子から、自分の便秘の原因を考えることができます。便秘の原因がわかれば、その原因に合わせた効果的な治療ができます。

東洋医学では、大きくわけて4種類の便秘を考えます。

  • 熱秘:乾燥して固い便。
  • 気秘:残便感の残る便。
  • 虚秘:排便に時間がかかり、疲れる。
  • 冷秘:腹部の冷痛を伴う。

1つずつみていきましょう。

熱秘(ねつひ)

  • 便の質:乾燥して固い。
  • 原因:体の中の熱が高い状態。

熱が原因による便秘を、「熱秘」と言います。体の内外の熱によって、津液(水分)を消耗します。結果的に、便の水分も少なくなり、乾燥して固い便になります。乾燥し、固い便は排便するのも大変で、痔につながったりもします。

また熱秘による便は、臭いが強くなります。

気秘(きひ)

  • 便の質:便意があるのに残便感が強い、すっきり出ない。
  • 原因:気の滞りである「気滞」が原因。

気滞が原因による便秘です。気の滞りが、便の滞りにつながるイメージです。便通はあるものの、残便感がありすっきりとしない場合は、気滞である可能性が高いです。

お腹が張り、おならをすると楽になるような感覚があれば、それは気滞の影響が考えられます。

虚秘(きょひ)

  • 便の質:排便に時間がかかる、排便後に疲労感があり、汗をかく。
  • 原因:気虚、血虚。

気の不足や血の不足など、「虚」が原因による便秘を虚秘と言い、主に気虚と血虚が原因になることが多いです。

気虚の場合、便を押し出す力(推動作用)が弱いためうまくいきめず、排便に時間がかかります。また、排便も一仕事といった具合に疲労感を伴い、汗をかくことがあります。

血虚の場合、便は水分を失い固くなり、コロコロとした兎糞状の便が特徴的です。

冷秘(れいひ)

  • 便の質:冷えによる腹痛を伴う。
  • 原因:陽虚。

冷えが原因による便秘です。体を温める働きが低下しているため、腸の動きが低下して便通がなくなってしまいます。

 

便秘の治療に効果的な、東洋医学の考えやツボ

では、便秘を改善する東洋医学的なアイディアを確認していきます。

東洋医学の良いところでもあり、面倒なところでもあるのですが、「これをしたらすぐ治る」というものはありません。体の全体をみて、それぞれ整えていく必要があります。

ここでは便秘の治療のために、「臓腑の働き」と「気血や寒熱のバランス」の2点を、より細かくみていきます。

臓腑の働きを整え、便秘に効く経穴(ツボ)

臓腑の調子を取り戻して、便秘にならない体になる経穴(ツボ)を紹介します。セルフケアの一環に、試してみてください。

天枢(てんすう):大腸の働きを取り戻す

天枢は胃の経絡に所属し、大腸の働きを整えるツボです。胃の経絡に所属するため、胃腸全体に効果があります。

おへその両脇、指3本分外にあります。指で押し込むと腸への刺激にもなります。

太衝(たいしょう):肝の働き、気の巡りを整える

太衝は肝の経絡に所属し、疏泄を促し、気滞を改善するツボです。

足の甲にあるツボです。足の親指と人差し指の間を足首になぞっていくと、指が止まるところがあります。具体的には、第1中足骨と第2中足骨のぶつかるところと言います。

足三里(あしさんり):脾胃の働きを取り戻す

足三里は胃の経絡に所属し、脾と胃の働きを整える作用の強いツボです。「腹部、消化器に関する不調には足三里」と言われるほどのツボです。

お膝の下、指4本分下がったところにあります。スネの骨の外側にあります。

太渓(たいけい):腎の働きを取り戻す

太渓は腎に所属するツボで、体を温め、生命力(気血の源)を高めます。

内くるぶしの一番出っ張っているところとアキレス腱の間にあります。

気血や寒熱を整える

便秘の4タイプ、それぞれについての養生を確認していきましょう。

熱秘:乾燥・固い便の便秘の場合

熱秘の場合、熱を冷まし、大腸を潤すことで便秘を解消します。体の熱を冷ますため、涼性・寒性の食材や水分を補充できるような食材をとりましょう。

  • きゅうり
  • トマト
  • スイカ

体を冷やす働きがあるため、食べ過ぎには注意が必要です。また、なるべく加熱・加温した状態で食べることで、「体を冷やす力」を抑えつつ適度に水分を摂取できます。

気秘:残便感のある便秘の場合

気の巡りを良くすることで、気滞による便秘を解消します。気の巡りに関わるのは、五臓の肝です。

先述した「太衝」というツボを刺激する他、注意点としては、ストレスを避けること、目の疲れに注意することなどが挙げられます。これらは特に肝を疲れさせ、気滞につながります。

▶︎五臓の肝の養生と対策はこちらの記事へ

虚秘:うまくいきめない便秘の場合

虚秘は、気血が不足して起こる便秘なので、気血を補うことが治療になります。気血は一緒に不足することが多く、悪循環的に体調が悪くなる「気血両虚(きけつりょうきょ)」という状態に陥ります。

  • しっかりと休息をとる。
  • 胃腸に負担のないように食事をとる。
  • 睡眠もしっかりととる。

基本的なことですが、特に便秘の場合、胃腸に負担の少ない食事をとることが大切です。臓腑の脾や胃が消化・吸収をするためにも気は必要です。気が不足して脾や胃の働きが低下すると、飲食によって栄養を吸収できなくなります。

食生活の乱れや、偏りには注意しましょう。虚秘の場合は、特にお粥がオススメです。お粥は脾や胃の消化活動を助け、体を温める力や栄養する力の豊富な食事です。

▶︎「気虚」の詳しい症状や対策についてまとめた記事へ
▶︎「血虚」の詳しい症状や対策についてまとめた記事へ

冷秘:冷痛を伴う便秘

冷秘は体の状態でいうと「陽虚(ようきょ)」と言えます。そのため、体の陽なる力を補う必要があります。

体を温める働きのある温性・熱性の食材が良いですが、これも過剰にとりすぎれば体に余分な熱がたまります。

  • シナモン
  • スパイス
  • 人参
  • お米

 

 

おわりに

東洋医学的に考えると、便通という体の一つの働きに対して、多くの臓腑や気血の働きが関わることがわかります。その臓腑の働きや、体内の気血水のバランスは、日々の生活によって整えられています。

結局大切なのは、食事・運動・睡眠などの普段の生活を整えることです。毎日良い「体からの便り」が来るよう、整えていきましょう。

 

 

鍼灸指圧治療院あたしんち

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